第12話 仕立て

 機体の調整がそろそろ終わりを迎えようとしていた頃。


「初陣ですか!?」

 王子の言葉に驚いた。いつか、来るとは思っていたが、やはり驚く。

「機体の最終試験といったところでしょうか。」

 怖いような、でも嬉しいような複雑な気持ちだ。

「初陣と言っても、魔獣討伐の簡単な仕事ですよ。」

 笑顔で言ったけど、魔獣って…。この世界にはそんな生き物がいるのか…。

「魔獣!?」

 その場の皆が僕が驚いた事に、驚いた様で、

「シオン殿の世界には魔獣はいないのですか?」

 王子は興味津々っ言った感じで聞いてきた。

「いません。大きな動物ならいますが、魔獣と呼べる程では無いです。」

「なるほど。では、少し魔獣についてお話しておきましょう。」

 魔獣という響きに興味がわいてきた。


「魔獣と一言で言っても様々で、手のひらに乗るものから、山よりも大きいものまで…。」

 山より大きい!? 怪獣クラスだ。

「動物と魔獣の違いは…。」

 ためた。

「魔獣は必ず人を襲います。学者の話では、人を喰らう事で、その者の持つ魔力を体内に取り込むとか…。」

「人に害をなすのが魔獣ってことですか…。」

 これは転生者としての天命かもしれない。いつの間にか握られている両の拳。


「今回は国外れの村の近くに出現した魔獣を討伐に参ります。」

 辺境の魔獣…。これは、第三話の話だ。

「それに、初の実戦なので何かあれば直に戦場から離脱となります。」

「魔獣が追って来たりしませんか?」

「ご心配無く、私の部隊を連れて参りますから。」

「それなら、安心です…。」

 保険はあった方が良い…。


「明後日(みょうごにち)の朝、出発となるのでご用意を。」

「解りました。」

と、言ったものの別段用意なんて必要無いだろうと、高をくくっていた…。



 王子と別れると、直にやって来たのは仕立屋の集団だった。束ねている者が、

「しばらく、動かないでくださいませ。」

と、言うが早いか囲まれ採寸された。


 それからは、仕立屋が交代交代でやって来ては全身に衣装を当てては直すを繰り返した。

 トイレまで押し掛けて来た時は、うんざりした。

 が、しかし…、

「間に合わなかったらどうするんです!」

 凄い剣幕に圧され、

「お、お願いします。」

って、言ってしまった。



 そのかいあって、衣装は出発前に完成した…。正装と操縦用の二着。

 ある程度、用意はしておいたのだろうが、この短期間で仕上げるとはこの国の仕立屋は凄いと言う他は無かった。

 デザインに関しては、これがこの世界の流儀なんだな…、とだけ言っておく。


 正装は、如何にもファンタジーの服って感じで刺繍に金属の装飾がたっぷりだった。


 操縦用の方は、ツルリとした感じで肘や膝等にクッションが入った機能重視のデザインだった。

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