第10話 秘密

 そこは、闘技場の外周に設けられた待機場所の様だった。


 テーブルに着くと直ぐにメイドがワゴンでお茶を運んで来た。

「後はやる。下がってよいぞ。」

 人払いした。


 お茶を一口し、

「シオン殿。新型魔動人はどうでしたかな?」

「ええ。素晴らしい機体です。初めて乗って動かせるなんて。」

 先程の興奮が蘇る。

「正直、驚きました。まさか、最初であそこまで動かせるとは…。流石、転生者…。いえ、シオン殿ですな。」

 恥ずかしくくすずったい感じに襲われる。

「いえいえ、この国の技術力の高さでしょう。」

「そう言っていだだけると、携(たずさ)わった者が喜びます。」

 笑顔で言った。


「お褒め頂いた、あの新型魔動人なのですが…。実は…。」

「な、何かあるのですか?」

 まさか、パイロットを下ろされる!? 心臓がバクバクし始めた。

「あの機体は、更に効率良くシオン殿の魔力を伝達する仕掛けがあるのです。」

 ホッとして、

「そんな、仕掛けが…。」

「はい…。」

 王子の言い方に引っかかかり

「何か問題でも?」

「問題と言う程では、無いのですが…。」

「では何が?」

「実働する場合には、コックピットを感応羊水で満たすのです。」

 その言葉で直に思い当たった。あの、ロボットのコックピットと同じだと。

「そんな事ですか。僕は全く気になりませんが。」

「いえ、操縦と言うよりも…、それ以外が問題でして…。」

 言っている意味が理解出来なかった。

「一度、感応羊水で満たすと、おいそれと外に出られなくなるのです。」

「あっ!」

 そうか、あのコックピット形状だと簡単に出られない。やっと理解できた。

「そ、そういうことですか…。」

「そうなのですよ…。」

 ちょっと申し訳なそうな語尾。

「それに効率良くと言うことは、シオン殿に負担がかかるやもしれないとの事なのです。ですから、戦闘直前までは、極力何もしない…。」

「戦闘に集中しろと。」

「はい。そのために、あの新型魔動人は補助席…、複座式になっています。」

 複座式!? コックピットにはシートは二つは無理そうだったけど…。

「もう一つのコックピットは、機体の腹側にあります。」

「離れているんですか、道理で判らなかったわけですね。」

「そういう事です。」

 間を置き、

「その補助役を私(わたくし)が行います。」

 王子、自らが僕の補佐をしてくれるのか!

「王子がですか…。」

「ご不満でしょうが、よろしくお願いいたします。」

「いえいえ、王子と一緒だなんて光栄です。」

「ありがとう御座います。」

 王子から差し出された手を固く握った。


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