第4話 宴
着替え終えると、
「こちらへ。」
先程の場所とは反対側に案内される。
歩いている間に、周りを観察してみた。
今歩いてるのは廊下というよりは、通路だ。所々、壁に松明が灯してあり灯りを確保している。
解り易く言うとロールプレイングゲームのダンジョンの中。実際に歩いてみると上下左右と大きな石で組まれた通路は圧巻だった。
これを作る為にどれ程の労力が必要とされたのか、現代人の僕では想像できなかった。
案内が右に曲がった。付いて曲がると登りの階段だった。
登るに連れて漂う空気に変化があるのがハッキリと解った。それは、カビ臭く無くなっている。
先程の場所は地下だろうと、想像には易かった。
そういえば…あのアニメの主人公が目覚めたのも地下だったな…。
階段の上は、外の光で溢れていた。大きな美しい庭が見え、白い大きな建物も見える。それを見ているうちに、いつしか足が止まっていた。
「どうか、されましたか?」
「いえ、美しい庭なので見惚れてしまいました。」
「お褒めいただき、ありがとう御座います。この庭は我が国の自慢なのです。」
それは間違いないだろうと解る程立派な庭だったから。
「参りましょう。」
促された。
庭を右手にしばらく歩く。今、自分が居る建物もかなり大きいと解る程に。
「こちらです。」
通された部屋には、綺羅びやかな服装が数人と、見るからに魔法使いかその類の人間が数人に、豪華な食事が待っていた。
「ささ、お座りください。」
と、入り口近くに待機していた男が席へと案内した。
椅子が引かれ、席へと付くと戻される。貴族とか高貴な人がやるアレだ。
一番、綺羅びやかな年配の男性が、
「ようこそ、転生騎士殿。私はこの国の国王です。」
自己紹介した。滲み出る風格は雄弁に物語る。
「私は、第一王子。」
と、続き…
「私は、第二王子。」
第五王子まで。
他には、宮廷魔術師。やはり、魔法使いだった。
宮廷錬金術師も居た。
一通り、紹介が終わると、
「転生騎士殿のお名前は?」
と、国王に訪ねられた。
「私は、ヤマ…。」
言いかけ、転生したのだから…。やはり、名前はアレを名乗るのが良いのだろうと、
「私は、シオンと申します。」
これは、いつもやっているMMOのキャラクターの名前だ。
「では、シオン殿。ささやかですが、転生記念の宴を始めまする。」
国王の言葉が合図で、目の前のグラスに、濃い赤の液体が注がれた。
「これは?」
「我が国自慢のワインです、特とご賞味あれ転生騎士殿。」
笑顔で答えた国王。
「いえ、私は未成年ですから…。」
少し怪訝な顔をし、
「はて、とうに15歳は超えておると思えるのですが?」
そ、そうか。ファンタジー世界では成人は15歳ぐらいが普通だった。転生前の僕は下戸だったけど、飲んでも大丈夫だろうか?
「では、皆の者。転生を祝して乾杯。」
国王の号令で、他の人達も一斉に、
「乾杯!」
と、グラスを掲(かか)げた。
覚悟を決め、
「乾杯!」
と、グラスを煽(あお)った。
味は悪くない。これなら飲めそうだ。
「いけますな。騎士殿。」
第一王子も煽る。
「騎士殿。ワインも悪くないですが、料理も我が国は絶品ですぞ。」
第二王子が勧める。家に帰ってからカップラーメン食べようと思ったたんだ…。お腹は十分減っている。
一口。
「美味しい!」
「お口に合いましたか。」
嬉しそうに第二王子。
「今日は、宴を楽しんでくだされ。詳しい事は、明日にでも。」
国王に言われ、僕は食事を口に運び、ワインで煽る作業に没頭した。
いつの間にか、遠のく意識。
あれ? 世界が回ってる? 体に力が入らないや…。
「大丈夫ですか? 騎士殿?」
もう、誰が言っているのか判らない。
「騎士殿は、お酒は強く無いようだ。誰か、部屋に運んで寝かせて差し上げろ。」
壁際に待機していた男達によって、僕は部屋に運ばれたらしい。
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