15

 胸子はレズっ気のある友達になつかれている。ずっと、彼女の胸を離さずにいる友達がいる。開業して三十年。そして、めぐみが店長となって一年が経った。

「お父さん、今日、誕生日だった?」

「いやー。違うよ。二月六日、風呂の日だよ。ばあちゃんら、銭湯やっとるやろう?」

「あー。そうやったね。あの、兄ちゃんらが、おちんちんを比べっこしていた銭湯ね」

「あのなー」

勝彦は呆れる。 

「しかし、何で富山なんかに移住したの?」

「日本一、住みやすい県だから。統計上では」

「それが感覚では、日本一、住みづらい県だったと」

「だから、東京に定住する」

「そんな、お金あるの?まさか、町中が家です!とか言うんでしょう?」

「うん」

「さすが、お父さん、あなたがお父さんで気楽よ。厳格さゼロやもんね」

「厳格というか、威張った父親に育ったから、自分自身はそうはなりたくなかったから」

「まあ、アパートも解約して、この店に住む方法もあるけれど」

「いやー。杉さんも馬三さんもいるやろ」

「彼らは気にしないでしょう」

「それもそうやろな。マスターも売上、上納していれば文句ないだろうし」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る