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「高円寺のみなさん、こんにちは。牛牛喫茶でございます!」

マスターは雄叫びを挙げる。

「はい。では、お願いいたします」

演奏はスタート。 

「♪高円寺」

不慣れなめぐみのアコギとボーカル。そして、牛牛喫茶の下手くそなコーラス。マスターはエキサイトし、ドラムセットを投げつける。

「はいっ、ありがとうございました!」

強制終了。

「ちょっと!弁償してもらいますからねー。十万円。この場で払って下さい」

杉並区職員の女性はマスターに請求。

「こんなクソセット、二、三万やろ!」

助け船を出した勝彦。

「あなたは黙っていて」

「。。。」

職員の制圧に反論不能な勝彦。

「仕方ない。払いますよ」

財布から十万円、取り出したマスター。心で泣いていた。

「はい。破天荒な演奏、ありがとうございました!続いては売れないプロレスラーの登場です!」

五人程、若手プロレスラーが出て来た。いかにも女子プロから、アイドル並みのルックスの女子プロまで。

「これまた、人数不足でやられ役がいないため、ご指名が来てます。杉並元区長、お願いいたします!」

「えー?」

驚いた杉を突き飛ばすように、マスターはリングに上げさせた。

「行くぞ!」

ごっついプロレスラーが杉にビンタをしていく。全力な感じである。数発、もろに食らう杉。

「さすが、あいつ、ビンタ慣れしているぜ」

マスターは感心する。

 続いて関節技をかけられていく。

「いやー。若手芸人並みの扱いですねー。元区長」

毒つかれる杉。観客は暇潰しで見ている。露店の缶ビールをマナー悪く、リングに投げつける輩もいた。

 イベントは進行していく。ダラダラと。

「杉さん、やられ役のために生まれてきたようね」

めぐみは言う。

「しかし、売上、一万円言ったね」

小銭をエンゲルで確認する。思う存分、牛牛亭の宣伝は出来た。

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