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 人生転落。今の勝彦はそんな気分だろう。しかし、清々していた。五十九才。大方の人は我慢して定年を全うするだろう。しかし、勝彦。

 清々とした朝を迎えた。高円寺に一ヶ月経ったある土曜日。今日は高円寺町内のイベントに牛牛喫茶も出場する。会場は高円寺駅南口の噴水広場。

 ご当地アイドル、B級グルメ。ゆるキャラとありきたりな演出を仕組んでいる。

 高円寺居住の売れない漫才師、バックレが漫才している。数々のバイトを仕事嫌いでバックレしまくり、高円寺に流れ着いた。

(バーン。ドンドン。)

花火は低く打ち上がる。

「只今より、高円寺町内祭りを開催いたします。まずはオープニングテーマ、高円寺子供合唱団の合唱です」

司会は杉。ヤジは飛んでいた。まだ彼の事を根に持つ区民は多いようだ。

「🎵オツムテンテンコウエンジ」

お世辞にも上手いとは言えない合唱でなかった。踊り子達の舞、チアリーダーなど。観客は出演者の関係者ばかり。曇一つない澄んだ空。悩みも迷いも忘れられるという感じだった。

 馬三は慌て出している。駄菓子のサービスを高円寺駅構内まで行って配布している。

「あのヤロウ。中野まで行っただろう」

「コーヒーじゃダメだから、酒を出すとはね」

めぐみはヨーヨーをポンポンしながら言う。

「参ったな。次の枠、ドタキャンらしくて」

イベンターらしき男がなげく。タオルを頭に巻き、台本を丸めながら、辺りをウロウロしている。

「すいません。次の出演さん、ドタキャンとしまって。よかったら、出て頂けませんか?」

ディレクターはマスターに言った。

「おー、いいじゃねーか。俺達も牛牛喫茶で出場しよーぜ」

マスターは勝手に決定した。

「えー」

めぐみは嫌がる。

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