第21話

『急に勝手な事を言って申し訳ないが……"渡し子"をお願いできんでしょうか。』


俺は言っている意味が理解できず母さんに視線を送る。

それに応える形で母がお爺さんの窓口となって質問を問いかけた。

『"渡し子"といいますと??』

さすが俺の母さん。言いたいことがよく分かってらっしゃる。

『あぁ…すいませんね。渡し子というのは沖洲で毎年やっているお祭りでそりゃ大事な役割をもった子供の事でね。毎年渡し子には、その"海石の首飾り"を持たせるんです。』

そう言ってお爺さんは俺のペンダントを指差す。

『ですが…突然引っ越してきたばかりの子供がそんな大事な役割を担うなんて…島の人達もどう思うか…それにそんな伝統的なお祭りに島の人以外の人間が携わるのはちょっと…』

うん、よく分かんないけどそんな気がするぞ俺も。

『失礼な事は十二分に承知しておりますで。それに、これも運命だと私は思っとるんです。』


『えっと…運命と言いますと?』


『いやぁ…烏滸がましい話かもしれんですが、半年程前に渡し子が色々とあって辞退してしまってね、その時に海石も紛失してしまったんです。そりゃぁもう島民総出で探しました。一応、島の神様が海石の中に住まわれてるっちゅうのが言い伝えだもんでね。私含む島のもんは必死でしたわ。』


『もしかして…ですけど、息子が持っているこの水晶が…』『御名答。作った私が言うんだから間違いはないでしょう。どうですか。運命を感じませんか?ははは…』


マジ?このお爺さんの作り話じゃなくて?あんなに簡単に見つかったのに。

なんかめんどくさい事になってきた。


その考えは母さんも同じようで『運命と言われましても…ねぇ?お父さん。』なんて曖昧な返事をしている。


『まぁ無理は言いません。ですが、もしお願いできないようであればその海石だけでもお返ししていただきたい。勿論お礼は致しますゆえ。』





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