第22話

町長に挨拶に行く筈が、変な頼み事の話だけで終わると言うよく分からない状況のまま俺たちは町長の家を後にする。


学校へ向かう途中も、車内の前列では先程の話について話し合いが進められている。


『お父さん。どう思う?』


『いやぁ、大変な事に巻き込まれちゃったなぁ。ははは。』


『もう!真剣に考えてよ?もしこれで誠司が逆恨みされて仲間はずれとかにされたら元も子もないじゃない!』


『母さんそれは…』


その会話で言いたい事はよく分かる。

"また"俺がいじめられてみんなから遠ざけられるかもって事だろ。別にいいんだよ友達なんて。しかもアイツはそんな事するようなヤツじゃないし。

…って別にまだ友達になった訳でもないのか。"海美"は。



「いいよそんなんやる気ないから。勝手にあの爺ちゃんが舞い上がってるだけでしょ?だから…安心して。」


その言葉に返事は無かった。


無言の車内にクーラーの風音が鳴り響く。


『着いたよ。』


すると木々に囲まれた無駄に広いグラウンドが目に飛び込んでくる。錆びれたサッカーのゴールに木の板がボロボロになったバスケットゴール。そしてグラウンドに反比例した小さなコンクリート造りの校舎。


「なんだ。以外に普通じゃん。ちっさいけど。」

もっと古びた木造の学校なのかと思ってた。少しはまともな建物もあるもんだな。


砂利の駐車場へ車を停めると、1人の男の人が駆け寄ってきた。

誰だろう?若いけど先生かな。


『あの、瀧山さんですよね?私、誠司くんの担任を受け持ちますタキナカと申します。宜しくお願いします。』


担任という言葉に一気に緊張感が増す。

見た目は悪くないけど信用ならないな、まだ。



『あら、わざわざすいません。どうぞお世話になります。』


『こちらこそお世話になります。ではこちらへ…』


案内されたのは校長室だ。


"大人の挨拶"を終えると早速事務的な会話へと移り変わる。


"大人の会話"にあくびが止まらずに、ぼーっと書類を眺めていた俺に、タキナカ先生が話しかけてきた。



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