第6話


「え?ここが新しい家??」


『そうよ♪可愛いでしょ??お父さんの会社の人が苦労して見つけてくれたのよ♪』


「えー、全然新しく無いじゃん…」


『何よそれ。住む家があるだけいいと思いなさい!』


なんだよそれ。会社で用意してくれるならもっといい家用意してくれりゃぁいいのに。


『お父さん。荷物何時だっけ?』


母さんに続いて車を降りると、まるで俺たちを歓迎しているかのように、潮風が"フワッ"と俺の髪を撫でた。


家の中は意外にも綺麗そうで、外見さえ気にしなければ、別に住んでやってもいいって感じだ。


「俺の部屋ドコー??ちょっと2階見てくるー!!」


胸を踊らせ玄関に駆け込むと、靴を脱ぎ捨てて家へと上がった。


板張りの廊下を進んで部屋を2つほど通過すると広い客間が姿を見せる。


そしてその奥に見えた縁側へと飛び出していった。


草刈りされたばかりの小さな庭には縁側の下に置かれた沓脱ぎ石から奥へと飛び石が並べられており、立派な松の木やびっしりと苔の生えた景石がチラホラと点在している。



すっげー!!よくテレビでみる田舎の婆ちゃんちみたい!!


親類が揃いも揃って都会に住んでいる"つまらない環境"の俺にはその風景がとても新鮮に見えた。


高鳴る気持ちを足に乗せ縁側のコーナーを勢いよく曲がる。


突き当たりに見えたドアの前に立ち止まり、「それでは開けてみたいと思います」なんて1人実況しながら木製のドアを開いた。


うわっ、マジかよ…


"キィー"と音を立て開いた先には見慣れない和式のトイレが備え付けられていた。

無理矢理後付けしたような水洗タンクが、ただでさえ狭い室内を圧迫している。


気を取り直し階段を探す。そして客間の反対方向で見つけた階段を"キシキシ"と音を立てて登っていった。


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