第5話

出庫を終え待機してくれていた父さんの車に乗り込み、何もない田舎道を走っていく。


そこには見慣れたビルの群れも渋滞する車の列も無い。


そこにあるのは聳える山々や案山子の立つ畑、水の張られた田んぼ…どれにしても車窓から見える景色は同じに見えた。



「ねぇまだ着かんのー??俺、腹減ったんだけどー。」


『さっきまで死んでたくせによく言うわ。』


「もう治ったし!!てかコンビニ寄ってよ!喉乾いちゃった。」


『ははっ、誠司。コンビニは無いかなぁ。』


「えぇー…まぁ、あったら寄って。」


確かにこんなど田舎だし、コンビニなんてそんなに無さそうだもんな。


『いやっ、沖洲にはコンビニは無いと思うぞ?似たような店ならあるみたいだけど。はははっ。』


その言葉に耳を疑った。


だって、コンビニなんてフツウちょっと歩けばそこら辺にあるもんじゃん!俺んちの近所なんて減らして欲しいくらい多かったのに。


ここは想像以上の"ど田舎"なのだろうか…


途方に暮れている俺をよそに、車窓の景色は"田舎道"から"山道"へと変化していく。


「ちょっ…と…大丈夫?山じゃん!!」


『あら、自然が豊かなトコって言わなかったっけ?』


それにしても豊か過ぎるだろ…


半ば騙されたような気持ちで木漏れ日の中を右へ左へと揺られていく。


『誠司!もうすぐ着くぞ!』


その一声が何かの呪文だったかのように辺りが急に眩い光に包まれた。


次の瞬間。


「あ…海…」


視界に広がる輝く海。それは水色のビー玉を溶かしたみたいにキラキラ輝いて俺の目を釘付けにした。


『さっ、着いたぞ!』


海から視線を引き剥がし前方に目をやると、白塗りされた木造の家が森林を背にひっそりと佇んでいた。

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