第2話
目が覚めると、目の前に広がったのは白い天井。
ふと腕を上げ、自分の顔の前に掌を広げる。
「ここは……?」
強烈な倦怠感を感じながらもゆっくりと身体を起こす。
そして、辺りを見回す。
自分が横になっているベッドは真っ白で、周囲は若草色のカーテンで囲まれている。
「病院……かな。」
ぼんやりと感じた感覚を確かめようと、立ち上がろうと身体を動かそうとするが、動かす事は出来なかった。
腰の辺りにベルトのような物が巻かれていて、一人でベッドから起き上がる事が出来ないようになっていた。
そんな風にもぞもぞと身体を動かしていると、その物音に気が付いたのかペタペタという足音が近付いてくる。
「あ、起きたんですね。おはようございます。」
カーテンがシャッという軽快な音を立てて開かれると、明るい笑顔を浮かべた看護師さんの顔が目に映る。
「おはよう、ございます……。」
条件反射的に挨拶を返すと看護師さんはニコっと笑って、他愛もない事を話しかけてくる。
この看護師さん、よく喋るなぁ……。ふと胸元の名札に目を向けると苺という名字らしい。
珍しい名字だ。私と同じ。顔もなんとなく私に似てるのに、私とは正反対だなぁ……。
そんな事を思いながらぼーっとしながら耳を傾けていると、もう一つの足音が近付いてきた。
「あ、先生。雪雫さん、目が覚められました。」
看護師さんが部屋に入ってきた足音の主に声をかける。
「おぉ、そうか。じゃあ早速だけど、説明しようか。」
やってきたのは白衣に身を包んだ医師のようだった。
「おはようございます。色々と混乱もされているかと思いますが、まずは今の状況をご説明致しますので別室までお越し頂けますか?」
「はい……、お願いします。」
淡々としながらも丁寧な口調の医師の言葉に頷くと、腰のベルトを外してくれた。
まだまともに自分の足で立てない身体を車椅子に預けると後ろから看護師さんが押してくれる。
「あの、ありがとう……。」
「あはは、大丈夫ですよ! 慣れてますからねー、それに車椅子押すの得意なんです!」
背後から明るい口調で話しかけてくれる。
確かに、心地良い。車椅子を押すその手から優しさが伝わってくるような気がする。
「うん……、本当。上手だねぇ……。」
ぽつりと呟いた後、何故か後ろから聞こえてくる声が少し上擦っている気がした。
少し移動して、五畳程あるだろうか、テーブルと椅子だけが置いてある部屋に通された。
私は車椅子のままテーブルの前につき、反対側には医師が腰かける。
看護師さんは一礼すると、私に笑顔を向け小さく手を振りながら退室していった。
二人きりになった室内。医師の口がゆっくりと開かれる。
「端的に申し上げます。ここは貴方が生きていた時代ではありません。貴方がいた時代の少し未来の世界です。」
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