ジェイムズ・P・ホーガン
ジェイムズ・P・ホーガンというSF作家がいる。2010年7月12日に亡くなっている。
いちおうハードSFに区分けされる作風の作品を多く残している。
一番有名なのが、「星を継ぐもの」に始まるガニメアンシリーズだ。オールタイムSFベストを挙げる時、このシリーズの名を出すSFファンは多い。SFマインドをこよなく刺激してくれる作品なのだ。因みに星野之宣が漫画化しているが、これがまた素晴らしく本格宇宙SFだった。
他に、「未来の二つの顔」とか、「断絶への航海」、「未来からのホットライン」などがある。
彼の作品には共通する物語の骨子がある。一つの大きな謎や課題などを冒頭に提示し、その解明や解決を目指すといった内容のストーリーを展開することだ。その謎というか、アイディアと言うべきか、これがなかなかに凄くて引き込まれるものがあった。
例えば、「星を継ぐもの」では月面で五万年前に死亡した宇宙服を着た
一つのアイディアからこれでもか、これでもかとヴィジョンを展開させていくストーリーは見事なもので、これこそが所謂センス・オブ・ワンダーというものだと思う。実に良質なハードSFを読んだと思い、満足したものだった。
しかし――――
ホーガンの作品はハードSFではない、という意見がある。それっぽく見えるが本当は違うという意見だ。自分が知ったのは石原藤夫というSF作家の意見だった。この人は工学博士で、つまり科学者だ。その視点からの主張になる。
ホーガンの作品は時に飛躍することがあり、特に後期の作品は疑似科学的色彩が強くなっている。その点から少なくともガチガチのハードSFではないとは言える。ただ自分には断定できない。自分が文系のせいなのかもしれない。
ハードSFだからといって必ずしも科学的に正確である必要はないはずだし、石原藤夫自身もそう言っていたような気がする。科学的な思考や知見などがしっかりと描かれていればいいと思うし、これがハードSFの最低条件なのだろうと思っていたが、やはり自分は文系なので、そもそも「科学的」なるものを理解していないのかもしれない。
ホーガン作品には科学的探究心を貫く姿勢が現れていたと自分は感じていて、これで十分にハードSFと言えると思っていたのだが、違うのだろうか? 今に至って答えは得ていない。
まぁ、ハードSFとは言い難いと言われれば、そうかなとも思えいこともない。結構無茶苦茶な描写もあったし。ガニメアンシリーズでの話だが、地球の月が実は他の惑星の衛星で、超文明の力で運んできたものだ――とかやっていたし。いくら正確でなくてもいいとは言っても、やはりハードを名乗るのなら程度は重要なのかもしれない。違うかな?
ハード云々はともかく、自分はホーガンは好きだ。胸躍る躍動感を感じさせてくれたし、だからセンス・オブ・ワンダーが溢れていたと思うのだ。よってハードでなくともSFであることは確実だ――と思うのだが――――
しかし――――!
以前、あるところで「ホーガンの作品はSFはない」と断言する意見を目にした。ハードSFどころか、SFですらないと言い切っていたのだ。これには驚いた。
その人に言わせるとホーガンの作品は科学的説明を省いてファンタジー世界の話に置き換えることが可能なのだそうだ。魔法などと置き換えられる性質のものなのだそうだ。それを根拠として、SFですらないと言い切っていたのだ。この人は科学技術系の仕事についているようで、よって科学的思考の訓練はしっかりと受けているみたいだ。だから彼にとってのSFは科学的思考の描写が重要な意味を持つようで、どうもホーガンにはそれがないと言いたいらしい。自分なりの法則に基づいた定義づけが確立しているようだ。
自分が文系なせいなのか、この意見はよく分からなかった。ホーガンは十分に科学的思考や姿勢があると思っていたので、何故違うと言い切るのか、彼の法則そのものが今ひとつ理解できなかった。
ハードでないのは有りうるのかもしれないが、SFですらないというのは未だに戸惑ってしまう。
所詮自分は文系、絶対に理解できないということなのだろうか?
まぁただ、この分野の定義なんてあやふやなもので絶対だと言い切れるものなどないのだろうと思うし、人それぞれでいいんじゃないかとも思う。
――というわけで、ホーガンはSFだ! 自分にとってはSFなんだと決定する。誰が何と言おうと彼の作品はSFなんだ! ハードSFじゃないかもしれないけど……
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