グレゴリィ・ベンフォード

 自分が好きな作家の一人にグレゴリィ・ベンフォードという人がいる。

 代表作は「夜の大海の中で」に始まる「銀河の中心シリーズ」だ。シリーズの作品は他に「星々の海をこえて」「大いなる天上の河」「光の潮流」「荒れ狂う深淵」「輝く永遠への航海」などがある。


 この人の描き出す宇宙の描写には本当に痺れる。特に銀河の中心シリーズ第3作である「大いなる天上の河」は印象に残った。

 そこで描かれた銀河系中心核の光景はまさに赫奕と呼ぶに相応しいものだった。また、そこに存在していた寒冷な気候の惑星上に生きていた人類の末裔の姿などはSFならではの想像力に溢れたものだった。現代の人類とは大きく性質を違える風習は数万年の時の経過を否応もなく理解させたものだ。

 物語の展開は実に活劇的でエンターテインメントに満ちている。根本はハードSFだが、サイバーパンクやスペースオペラ的要素が織り交ぜられた作品世界は自分の脳内に絢爛豪華たるヴィジョンを創り上げたものだ。あの惑星(スノーグレイトと呼ばれていた)上から見上げる銀河渦状肢を「天上の河」と表した描写には痺れたものだ。その瞬間には自分自身が見上げているように思えたからである。言霊の響きとは、このことを指すのかと思ったものだ。

 ベンフォードの作品は文体が秀逸で、巧みに装飾された表現の数々は雄渾・壮麗と呼ぶに相応しく、宇宙を描くのにこれ程 適したものはないと感じられる。自分が読んだのは翻訳なので訳者が素晴らしいと言うべきだが、本国での評価を見るに、ベンフォードは文体の評価も高いようで、自分の印象は外れていないと思う。


 こんな感じで彼の作品は自分の嗜好を思う存分充足させる要素に満ちており、これが特別に感じられる理由だ。


 ところでグレゴリィ・ベンフォードを知っている人にあまり会ったことがない。ネットでは少しだけいたど、リアルでは皆無だった。何でだろう? SF好きなら名くらいは知っててもよさそうなものなのに。

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