第6話 あく手

 ある夜、一人の小学生が、自分の部屋で、明るい楽しいイラストがかかれた本を読んでいました。それは洋平の日記でした。

 読んでいたのは、六年生になったばかりの智さんです。智さんは、友達のわの中に入れないことで、悩んでいました。心の中で思っていることを、うまく言葉に出せなかったり、悪気はないのに場にそぐわない言動をして、友達がはなれていってしまったりしていたのです。

 

(洋平という子の気持ちはとてもよく分かる。でも、いくらなんでも、死なないでほしかった。)


 智さんは、洋平に会いたくてたまらなくなりました。洋平と友達になれたら、本当の気持ちをいろいろと、話し合うことが出来たかもしれないと思ったのです。でも、たずねていっても、手紙を出しても、洋平には届かないのです。


 どうすればいのでしょう。


 じっと考えた後、智さんは洋平と友情のあく手をしたいと思いました。そして、窓をあけると、洋平にさしのべるつもりで、夜空に向けて右手をあげました。


 星が、またたいていました。


(了)

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空に右手をさし出して @m_e_yszw

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