11

智ちゃんはボコボコ。私はバカ。


大和くんはまんまといつもの調子のタレ目で、私に会いにきた。店の近くのカフェ。

顔を見た瞬間クズ野郎って叫んだ。頭が。心が。私じゃない。


智ちゃんから連絡が来た。


【ボコボコだけど、大和にやられたわけじゃないからね、ありがと】


じゃあ何さ。


「何急に、これから出勤なクセして」

急に馴れ馴れしくなった大和くんの目尻を見た。

「別に。ひまだった」

「あそう」

何が起きてるのか。今この現象が、行動が、言葉が何と連携していて、どう現在進行形なのか。わからない。

「最近忙しくてなかなか行かなくてごめんね」

「いや、そこは別に」

「智が最近料理に凝っててさ」

「智ちゃん」

「ん?」

「元気なの?」

「あれ、何連絡もとってないの?」

「うん」

「おい友達」

あまりにも普通だ。いくら話しても大和くんはあまりにも普通の人だった。

あの傷と繋がらない。全く。

でも、大和くんはあの状態の智ちゃんと平然と顔を合わせてる。拉致でもされたの?リンチとか?殺人未遂?


「あいつおかしいよ」


でも智ちゃんは、一度そう言っていた。

私の目を見つめてるわけでは無かった。


「大和くんは智ちゃんが好きなの」

「うん」

「へえ」

「嫉妬?」

「なにがだよ」

「冗談」

大和くんは、真剣だった。この人がイカれてるとは、とても思えないほど視線も透き通っていて。

「浮気性なの?」

って目を見て聞いても

「違うんだ、この前はごめんね」

だって。気まずくも無さそう。でも今日来たじゃん。私に呼ばれてきたじゃん。智ちゃんは、大和くんのとこに帰ったはずなのに。そこから何かしらの嘘ついて私のとこにきた癖に。なんでそれで真面目で真剣な交際のふりするの?


ふざけんなっつってんだよ。


「きいちゃんは、俺に興味がないんじゃないの?」

「なんで?」

「今日は質問ばっかだから」

大和くんのコーヒーの氷が、溶けて音を出した。私の目の前には、今どんな人がいるのだろう。智ちゃんは、大和くんが好き。どんくらい?って多分だいぶ。二人の信頼は固い。かたい。硬い。なんでだろ。新山くらいすきなの?笑ってもいい?


「智ちゃんに会ったの」


もう出勤だ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る