10
深くは話さなかった。
泊まっていったけど。智ちゃんを家に帰したくなかったのに帰したかったのかも。
最悪なベッドで、二人天井に向かって話した。
扇風機がうるさい。
「どこに帰るの」
「とりあえずは大和のとこかなあ」
「なんかさ」
「うん」
「他の友達に会ったら、なんていうの」
「…転んだとか」
「え?」
「え?」
「すごいかっこいい転び方しなきゃそんなことになりません」
「仕事も休んでるんだ」
「そりゃーそうだね」
「ぼろぼろだからさ。ファンも帰るわ」
「ファンね」
「つっこめよ」
「めんどくさ。お前」
「また会えるかな」
「何が?」
「…」
「は?」
私は起き上がる。すると智ちゃんは
「せつない話みたく、してみたあ」
とアホみたいに言うから殴った。
人は皆単体で生きている。
次の日の朝、傷の手当てをしてあげたら、智ちゃんは私の家を出た。
「もういいの」
「うん」
「…」
「ほら怪しまれたり」
「もう一泊してけよお」
「今日は帰らなきゃ」
「…」
「いや普段は普通だから」
「ゾンビみたいな見た目でよく言うね」
「いや最悪あなた」
「またおいで。むしろ今日おいで」
「また連絡するよ」
「うん」
「じゃねお邪魔しました」
「はい、きいつけて」
扉が閉まった瞬間、「待ってました」というようにまた涙が止まらなくなった。どうやったらあんな傷だらけになるんだ。とか、私にできることがもはやわからない。とか。
今日、仕事なのに。
涙が止まらない。
絶対智ちゃんも、帰り道泣いてた。
せっかく手当したのに。
大和くんに連絡した。
【今日なにしてんの?】
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