04

本当に次の日の夜、智ちゃんの家に招かれた。

「お邪魔します」

って言ったら

「おかえり」って智ちゃん。


奥に髭面の男が後ろ姿で存在していた。

どこのかもわからない怪しげな煙草を吸っていて、智ちゃんの「おかえり」で振り向いた。


タレ目、すぎ。


「あぁ、例の」

優しそう。


「近藤大和です。よろしくね」

こんどうやまと、て。

「いやいつも智ちゃんがお世話になっております。」

「いやいや、こちらこそ。」

感じのいい人だ。


結婚しろ!!!決定!!


もう遅い時間だったので、智ちゃんが作ったおつまみと一緒に三人で小さなテーブルを囲んだ。

「トイレ行ってくる」

と立ち上がる近藤大和は、背が大きかった。

大和くんの用を足す音と、テレビの音が響き渡る。


「いいひとそうだなぁ」

と私が言うと

「あら、合格?」

「いや合格もなにも上から言えません私なんかが」

「満点のリアクション!」

「よかったわあ」

「なにあんた」

「智ちゃんのことだからどんなん出てくるかと」

「なんだそれ、おまえ」

トイレを流す音が聞こえて、大和くんが戻ってきた。


色んな話をした。2人は付き合ってまだ半年だとか、小学校の頃の智ちゃんの感じとか、普通にテレビの話とか。

優しく「幸せ」の顔をする人だなあ。


「なんかバーで働いてるんだってね、きいちゃん」

大和くんが、明らかに大人の顔をして私に言った。大和くんは30歳で、静かな優しい独特のオーラがあった。

私は夜はバーで働いていた。そんなにオシャレなバーでは無いし少し古びているので自慢できることではない。自分がバーテンダーなのかも果たして謎だ。色んな人が来る。智ちゃんもたまに来ている。


「連れてきてって言ってるのに、智ちゃんに。」


「なかなかねー」

「行きたいわ俺」

「今度行こうよ」

「…高い?」

「貧乏ぶってんじゃねえ」


二人は仲良くじゃれあって、私はそれをまろやかにガン見していた。智ちゃんのおつまみ、おいしい。どうせクックパッドかなんかで見たんだろ。


幸せって、形が無くて見えずらいものがこんなにも私の瞳に映るなんて私も幸せだ。


ごちそうさま。




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