永遠の牢獄

 これまでの記憶はすべて消去されている。

 目の前で彷徨うろついているものを排除しなければならない。

 手にしている武器はチェーンソー。これと金槌で身動きとれなくさせて、檻の中に放り込めばいい。

 それだけしか分からない。そうしなければならないという強迫観念に駆られる。余計なことを考えることは身体が受け付けなかった。


 無心に探した。

 闇雲に歩き回り、機械らしきものを見つけたら出鱈目にボタンを押す。


 やがて一人見つけ出した。

 片隅にある何かが反応している。思い出そうとしても蘇ることはない。

 金槌を振るいながら、枯れている涙を流す。その細くなった目から──


  *


 舞台から少し離れた場所にある大きな建物。

 全面にモニターが敷き詰められ、いくつかの装置が鎮座している。そのうちの一つにポールは先ほどまで寝かせられていた。


「このテストをクリアしたら、再出荷できそうですね」


 研究員らしき人が嬉しそうに報告する。

 腕組みをしたままじっとモニターを見つめている男が居た。


「不要になったアンドロイドを回収して負荷テストか」

「リサイクルですよ、リサイクル。脳にあたる部分さえ回収できれば費用はそんなにかかりません」

「血液の色はなんとかならんのかね。青色っていうのはどうにも違和感を覚える」

「それは技術開発部の三課に言ってくださいよ。僕らの管轄じゃありませんし」

「そうなんだが」


 男は課長デスクに座る。

 送られてきた報告書の内容を確認する為だ。


「それにしてもこいつらに魂ってあるのだろうか。もしもあったとしたら永遠の牢獄に捕らえられた可哀そうな存在──」


 そう呟くと、報告書を部長へと転送した。

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魂に休息は訪れるのだろうか 山羊のシモン(旧fnro) @fnro

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