四人目

 叫び声が空に響き渡った。


「新入りの声だろうな」


 トミーはぐるりと辺りを確認する。ポールもそれを真似た。遥か遠くに薄明るく灯る箱を見つける。

 パメラを助けた時は気づかなかったが、それぞれの檻の上には報知させるためのライトが設置されていることを教えられた。本来はこれを目安に救出するらしい。


「どうして新入りって判ったんですか?」

「声だ」


 もう一人の先輩も女性だが、先ほどの悲鳴は明らかにトミーの知る声と違うものだった。パメラの代わりに入ってきたから女性なのだろうか。確信は持てないが、男女比は変化していないように感じるという。

 助けに行こうとしたポールの前に立ちはだかった。


「気持ちは解るが、まだ猶予はある。そして修理する機械はあと一つ。しっかり作戦を練ったほうがいい」

「そのとおりですね。ただ早急に此処を離れたほうがいいかと思いますよ」


 おとなしめな女性がそこに立っていた。トミーは片手をあげて挨拶をする。

 自己紹介こそなかったが、すぐに先輩女性であることを理解した。最後の機械の場所を知る彼女に促され、身をかがめながらゆっくりと進んでいく。少しだけ余裕が生まれたポールは、改めて周囲の景色を確認した。


 薄曇りから漏れる月明かりは空気中に浮遊している小さい水滴や粒子などを照らし、ある種幻想的な風景を作り出している。

 湿気を含んだ剥きだしの土が月光を反射させ、膝丈くらいの草が茂っている中心あたりから幹の太い樹が空を覆っている。林のように密集しているところの近くに崩れかけた納屋らしき建物があった。振り返るとパメラを助け出した檻の近くには二階建ての小屋が寂しげな表情をしている。

 トミーに顎で指された方を見ると、細長い柱のようなものが天を突いていた。


 数本の樹と岩が集まった場所で三人は腰を落ち着ける。機械のすぐ近くには来ているが、殺人鬼が見回りにくる可能性を考慮してのことだった。

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