第19話 タナトスの日
直樹とマミ、そしてシローヌは桟橋に立って、接岸する大型空母ワイバーンを見守っていた。
周辺は連邦軍が警戒していて人影はまばらだ。
その時、ふ頭の管理事務所から制服姿の軍の士官が足早に近づいてきた。
「シローヌ様、アルテミス平原の丘陵地帯で敵の前衛部隊と首都防衛部隊が交戦しました」
シローヌはゆっくりと士官の方を振り向いた。
「結果はどうなったのだ」
「はっ。ネロ小隊と駆逐戦車隊が敵と交戦し、敵のクロノスを2機撃破し、後続の機甲師団にも大きな損害を与えました。敵の残存部隊はいったん後退し本体に合流している模様です」
「よくやってくれた。ネロ小隊を指揮していたダンカン少佐はどうしている」
「ネロ小隊は壊滅してダンカン少佐は消息不明です。しかし、ネロ小隊が敵のクロノスを足止めしている間に新型の駆逐戦車部隊が集中砲火を浴びせて勝機をつかんだようです」
「そうか」
シローヌは顔を伏せたきり黙りこんだ。
「クロノスって何ですか」
直樹沈黙を破るようには士官に尋ねる。
「ラダマンティス軍が使っているタナトスに相当する機体のコードネームです。タナトスとはシルエットが微妙に異なります」
話をしている間に接岸作業は終了に近づいている。
ワイバーンからはタラップが降ろされ、乗組員の一部が上陸を始める。そして、ふ頭からは大型のクレーンが接近し、飛行甲板からタナトスを収納したアークを降ろそうとしていた。
「ナオキ、マミ」
ワイバーンからタラップを降りてくる人影から直樹たちを呼ぶ声が聞こえる。
ミツルの声だった。遠目に、シンヤやレミーの姿も見える。
レティシアとカンナも含めた5人がレテ島から来ていた。
直樹はたったの2日しか経っていないが、久しぶりに彼らと会ったような気がした
「みんなどうしてここに来たの。私はモスキートで帰らなければいけないと思っていたのに」
マミの問いにレミーが答える。
「状況が変わったんだ。一式艦長はタナトス三体と引き替えに、レテ島の自治権を手に入れた。彼は連邦の空母レディドラゴンと護衛の駆逐艦部隊を貸与されてオケアノス海南部のラダマンティス軍を制圧する任務を引き受けた」
「私たちは、連邦軍に編入された方が将来のためになるからって放り出されたの」
レティシアが迷惑そうに続ける
「私はどうなるの」
マミが尋ねるとカンナが両手を広げて答えた。
「あんたはタナトスのパイロットでしょう、連邦軍に編入して働かされるに決まってるじゃない」
「勝手に決められても困るのだけど」
マミが困惑した表情でつぶやく。
「タナトスが絡んでいるから我慢してくれ」
レミーが申し訳なさそうにマミに言った。
「ルークの姿が見えないけど」
直樹が訊くとミノルは口をとがらせて答えた。
「ルークはレテ島で教育係として残る事になりました」
彼の場合は、本人の意思が尊重されたようだ。
直樹たちの会話が一区切りしたところで、シローヌが口を開いた。
「皆さんは連邦軍に編入していただきますが、タナトスを核とした特別陸戦隊として私の指揮下にはいってもらいます。戦闘を支援する陸軍部隊一個中隊と後方支援部隊も行動を共にします」
「えええ」
マミが声を上げた。彼女はシローヌが苦手なのだ。
「なにか?」
シローヌが問いかけたので直樹が答えた。
「いや、なんでもない」
その後、数日間かけて直樹たちの部隊編成が行われた。実質は支援部隊との顔合わせが主だ。
アークには入っていなかった装備も宮殿から提供された。
口径105ミリのライフル砲弾を連続発射するタナトスサイズの小銃と、大口径のロケット弾を発射するメガバズーカ、そしてセラミックの鋭利な刃を鉄でサンドイッチした巨大な刀だった。
直樹たちがロングライフルと呼んでいた大型レーザーガンも含めると、運搬するには多数のトレーラーが必要だ。
タナトス本体は自力で移動させる他無かった。幸い脚部にホバークラフト的な機能が備えられており、地上すれすれを滑走することは可能だ。
タナトスが歩くときの振動を考えると、ホバークラフト能力を活用するこよでパイロットの居住性には大きなメリットがあるが、足元に生身の人間がいたら風圧で吹き飛ばされるから注意が必要だった。
使用する火器の取り扱いと、地上部隊との連携訓練を受けた直樹たちは最前線に投入された。目前には、首都攻略を目指すラダマンティス軍の本体が迫っていたのだ。
直樹たちが配備されたのは首都から100キロミーターの距離にある防衛ラインの更に前面だった。
小さな丘の背後に、タナトスが隠れるほどの塹壕が作られ、連邦の工兵部隊が大急ぎで工事したことが窺われる。
タナトスに搭乗した直樹が潜む塹壕の背後には、マミとシンヤの機体用のロングライフルも集めた合計3丁とタナトス用のメガバズーカ、そしてタナトス用の小銃が並べられている。
直樹の任務は前面に立って長距離射撃で敵を牽制し、シンヤとマミのタナトスを温存することだ。
直樹の脇を退却してくる連邦軍の残存部隊が引ききりなしに通過する。
戦車や装甲兵員輸送車、車両に乗りきれずに衛生兵に担がれた負傷兵も見える。
「ナオキそろそろ敵の前衛が到着する。準備してくれ。」
シローヌの声が直樹の頭蓋に響いた。
シローヌがいる司令部とタナトスはウエーブ通信機で直結されている。
直樹は丘の稜線からタナトスのメインカメラの部分だけ地表に出して北に広がる平野を見渡した。
直樹の体はタナトスのコクピットで正体不明の液体に漬けられている。しかし、首の後ろから神経系に接続されたコードを通じてタナトスのセンサーの情報が伝わるので自分で顔を出して覗いている感覚だ。
地平線のあたりで煙が上がるのが見えていた。よく見ようと目を凝らすと、タナトスは視覚を望遠に切り替えた。
その辺りに展開して戦っているガイア連邦の部隊がいて、散開した戦車部隊が砲撃し、その後方からは砲列を敷いた自走砲が連射していた。
だが、敵のクロノスは戦車砲弾を感知してかわし、掌に仕込まれたレーザーで次々に戦車や自走砲を破壊していく。
連邦の部隊が沈黙するまでに時間はかからなかった。
クロノスの後ろから敵の機甲部隊と歩兵の大部隊が続いていたが、彼らはクロノスを前面に立ててやすやすと進撃していた。
直樹がロングライフルを持って射撃体勢を取ろうとしたとき、シローヌの声が響いた。
「待てナオキ、作戦通りにしろ。敵が迎撃ラインに来るまでは撃つな」
「しかし、ガイア連邦の部隊が追撃を受けている」
敵は敗走する味方部隊を殺戮していた。車両や生身の歩兵がレーザーでなぎ払われ、猛烈な火炎に包まれていく。
「言うことを聞け。命令だ」
仕方なく直樹はライフルを抱えたまま待機した。後退していた部隊は必死になって逃げる。
味方が殺戮されるのを見ながら耐えること数分。追走する敵のクロノス部隊が事前のブリーフィングで決めた迎撃ラインに到達した。
「ナオキ撃て」
直樹はロングライフルをフルパワーで射撃した。しかし、敵のクロノスは一斉にシールドを構えて防御態勢を取る。
同規格の武器を使うだけにクロノスにはロックオンアラートに相当する警報装置を備えていると思えた。
ロングレーザーが直撃したクロノスのシールドは温度が上昇して白熱したが本体は無事のようだ。
二十体前後の敵のクロノスは一斉にハンドレーザーで打ち返し、直樹の前の丘は加熱されて水蒸気爆発を起こす。
「ナオキ、壊れてもいいからロングレーザーを連続照射しろ。シールドを撃ち抜け」
直樹は土煙の合間から照準しながらシローヌに尋ねた。
「本当に壊れてもいいのか」
「その時代の機械は壊れる前に自動停止するはずだ」
シローヌの声は通信機を通じて、単調に響く。
「最初からそう言ってくれ」
直樹はトリガーを引いた。
ロングレーザーの連続照射を受けたクロノスのシールドは溶解し、クロノスの本体は白熱した後、大規模な爆発が起きた。
爆発の衝撃波が地面を揺るがしながら伝わり、数秒後に爆風が到達した。
直樹の近くに散在していた住宅が一瞬で砕け飛ぶのが見え、爆心地ではきのこ雲がたちあがっている。
周辺にいた2体のクロノスも爆発に巻き込まれたようだ。
直樹のタナトスはピンポンと場違いにのどかな警告音を鳴らし始めた。
ロングライフルの過熱警告のようだ。
直樹は加熱したライフルを置くと、別のロングライフルを取り、エネルギーが十分にあるのを確かめて射撃体勢を取る。
敵のクロノスからのハンドレーザーの反撃は漸減しており、序盤の地上部隊との戦闘もあったためエネルギーが尽きたと推察できた。
直樹は、遮蔽物を探してうろうろしているクロノスに二挺目のロングレーザーの連続照射を浴びせた。
再び大規模な爆発が起き、衝撃波と爆風が直樹のタナトスの頭上を通り過ぎて行く。
二挺目のロングレーザーの連続照射で2機のクロノスが誘爆して火球と化したが、三挺目のロングレーザーの連続照射で行動不能にできたクロノスは1機のみだった。
ラダマンティスのクロノス部隊は散開して全速力で直樹に接近しつつあり、接近戦に持ち込もうとする意図が露わだ。
加熱したロングレーザーはしばらく使えそうにない。
目前に迫ってきたラダマンティス軍のクロノスにリロードをハンドレーザーを集中すると更に1体が擱座した。
直樹はハンドレーザーが過熱する寸前だと気づき、メガバズーカを手に取った。
射撃体勢に入ろうとした時、シローヌの声が直樹の頭に響く。
「待てナオキ、メガバズーカは誘導システムを起動しないと発射出来ない。システムをオンにして起動インジケーターが点灯するまで待ち、起動インジケーターが点灯後に照準してロックオンマーカーがオンになったのを確認してから発射するんだ」
直樹は前線に配備される前に受けたブリーフィングでその説明を受けていたのを思い出したが、直樹を目指して突進するラダマンティスのクロノス部隊は至近距離まで迫っていた。
直樹はメガバズーカの射撃姿勢をとって先頭のクロノスを照準器に捕えたが、メガバズーカの起動インジケーターは点灯しない。
メガバズーカの照準器の中でクロノスはスラスターを噴射して跳躍した。
弾道飛行に入ったクロノスは照準器からはみ出しそうなくらいに接近して見え、その手にはレーザーソードが握られてた。
ビームソードは得体の知れない荷電粒子を何かの力場で封じ込めた剣呑な武器だ。
「わああああああああ」
敵のレーザーソードでコクピットごと焼き尽くされるのを想像して直樹が絶叫を上げた時、直樹の視野にある起動インジケータとロックオンマーカーが相次いで点灯した。
「直樹撃て」
シローヌの指令が響くのと、直樹がトリガーを引くのは同時だった。
対クロノス戦用に開発されたメガサイズのバスーカから射出された弾頭は大陸間弾道ミサイルのような巨大な火炎を引いて加速していく。
その弾頭はビクトリア級戦艦の主砲弾を流用したもので装薬量は1トンを超える。
直樹を目指して跳躍した敵のクロノスは直樹のタナトスに迫ったものの姿勢制御を余儀なくされていた。
弾道飛行する物体は当然ながら減速しないと地面に叩きつけられる。
直樹を目指して跳躍したクロノスは、レーザーソードを片手に構えた状態で、自動化された減速シークエンスに入っていたが、逆噴射態勢を取っているところに、直樹の発射したメガバズーカが直撃した。
クロノスは機体の腹部にメガバズーカの弾頭を受けて機体を二つ折りにするようにして急減速し、弾頭の爆発によって、跡形もなく四散した。
メガバズーカは重量がかさむため単発式しか作れなかったとシローヌが言ったことを思い出し、直樹はタナトス小銃を手に取った。
レーザーが主力兵器のタナトスタイプの機体同士が戦うとすれば、表面にレーザー耐性のあるコーティングや装甲が施されているはずだ。
シローヌは独自に開発した実体弾の威力に賭けていた。
ラダマンティスのクロノスは、十体を超える数が残っており、レーザーのエネルギーが尽きた彼らはビームソードを手に直樹に迫っている。
先頭の機体が弾道飛行で距離を詰めようとしてあえなく撃破されたので、残りのクロノスは遮蔽物を探しながら地上滑走で距離を詰め、直樹のタナトスを包囲しつつあった。
「マミ、シンヤ今だ。」
シローヌの合図でマミとシンヤのタナトスが地中から飛び出した。敵の背後を突くため偽装した壕にに潜んでいたのだ。
二人が操縦するタナトスはメガバズーカを構えると、一斉に発射した。
音速近くまで加速した弾頭はそれぞれに直樹を包囲しようとしていた敵のクロノスの背面に着弾した。
着弾と同時に大型鑑艇を一撃で沈めるほどの爆発が起きる。
さらに破壊されたクロノスが爆発し周辺を衝撃波と爆風が襲った。
マミとシンヤはタナトス用の豪にメガバズーカのランチャーを数基ストックしており、新たなランチャーを持ち出して更に敵を補足して射撃を続けている。
不意を突かれたラダマンティスのクロノス部隊が体制をたてなおすまでに数機が破壊されていた。
周辺は舞い上がった砂塵で薄暗くなっていく。
「全員接近戦でけりをつけろ。敵はつかえる戦力のほとんどを投入しているはずだ。ここで一掃できたら我々が優位に立てる。」
シローヌの指令を受けて、直樹はタナトス小銃を手に丘の影から飛び出し、ホバー機能を使って高速で前進する。
「シロさんて偉そうなのよね」
マミがぶつぶつ言っているのがインカムから聞こえた。
「そうでもないだろ、気を使ってる方だと思うぜ」
シンヤが答えた。2人は世間話をしながら敵のタナトスに小銃の砲弾を浴びせている。
「私語を慎め。誰がシロさんだ」
「盗み聞きするなんてひどい」
マミが可愛い系の口調で非難したが、シローヌは無愛想に答える。
「そっちがオープン回線で話しているんだろ」
直樹は緊張感のないやり取りとりに力が抜けていくのを感じたが、戦いは最終局面に差し掛かっていた。
数の上では今だにラダマンティスのクロノス部隊が直樹たちを上回っている。
土煙の中に敵のクロノスを認めた直樹は胸部にタナトス小銃の砲弾をすべて叩き込んだ。クロノスの機体はバランスを崩して仰向けに倒れた。
直樹は小銃を放り出した。
数日前のネロの戦闘データを回収したシローヌは初速の早い強装弾を使うように指示していた。
威力は増すが、マガジンの弾を打ち尽くした頃にはバレルも装弾機構もガタガタのはずで、
タナトス小銃も使い捨てを前提にされていたのだ。
直樹は倒れた敵の機体に馬乗りになってレーザーソードで胴体中央部を突き刺すとタナトスを立て直して全速力で離れた。
背後では大きな爆発が起きる。
「マミ、シンヤどこにいる。」
やみくもに動き回ると味方を撃ってしまう可能性が高く、一度合流する必要があった。
「作戦マップのw5辺りだ。マミも一緒にいる」
シンヤの返事が直樹の頭に飛び込む。
「2時の方向から近づくから気をつけてくれ」
「わかった」
マップ上の指定エリアに急いでいるとシンヤの声が飛び込んできた。
「敵のクロノスが6機残っている。今ビームソードで戦っている」
「すぐに行く」
やがて土煙の中に数体の人型ロボットが見えた。
ビームソードは力場が反発するから敵のビームソードを受けることもできる。敵味方は光るビームソードを振りまわして戦っている最中だった
タナトスとクロノス相違点は背中にある。
遠目にはほぼ同型の機体だが、タナトスはウイング状の構造があるが、クロノスは腕上の構造が作られているが、
しかし、多数の似たような機体が入り乱れると敵味方の区別がつかない。
「シンヤ、マミあいている方の片手を上げろ。」
2体のタナトスが可愛らしく片手をあげたのが識別できた
直樹はマミ達の背後から回り込もうとしていたクロノスにハンドレーザーを最大出力で照射した。
直樹がアニヒレーターで使ったリロードのイメージはタナトスの兵器でも有効だった。
他の機体はレーザーのエネルギーが尽きているが直樹だけがレーザー系兵器の再使用が可能なのだ。
背後から不意を突かれた敵は大きな火球となって消しとんだ。
「私が巻き込まれたらどうするつもりなのよ。」
マミが文句を言う声が聞こえたが、無駄口を叩けるということは無事なのだ。
シンヤは少し離れて2機を相手に戦っていた。
敵は何となくぎごちない動き方をしている。だが直樹はその動きに見覚えがあった。
「シンヤ奴らの腕は2本だけじゃない」
「え」
同時に敵のクロノスが中肢でシンヤに切りつけていた。
シンヤはかろうじて転がって避ける。
「こいつらアントノイドなのか」
シンヤも事態を悟ったようだ。敵のクロノスを操縦しているのは生物=機械の集合知生体、アントノイドに違いなかった。
シンヤは襲いかかってきた敵のクロノスに自分のタナトスの足をかけて転ばせた。パイロットが動作を制御できるからこその小技だ。
基本動作をプログラム制御するロボットではそうはいかない。
シンヤは逆襲してビームソードを敵のタナトスに突き刺した。
直樹は救援に向かおうとするもう1体の敵のクロノスにセラミックの刀で切りつけた。
直樹に気付いた敵は前肢のビームソードで刀を受けて、隠していた中肢のビームソードで逆襲する戦略を使おうとした。
しかし、セラミックの刀はビームソードをすり抜けて敵のクロノスの機体を大きく切り裂いていた。
直樹とシンヤが後ろを向いて全速力で退避するのと同時に2機のクロノスが誘爆し、爆風が追ってきた。
度重なる大規模爆発で周囲の視界は悪い。
先ほどまでいた場所にシンヤと直樹が慎重に前進していると前方から強い爆風が襲ってきた。
敵味方不明だがタナトスクラスの機体が破壊されて爆発したのだ。
「マミどこだ」
直樹はマミのタナトスが破壊されたのではないかと不安に駆られていた。
「こっちよ」
マミの声が聞こえ、さらに前進するとマミのタナトスが工事現場の誘導員のようにビームソードを振りまわしていた。
直樹らが現場に到着するとマミの周辺には手足をバラバラに解体されたタナトスの残骸が転がっていた。推定2体分と言ったところだ。
「急に奴らの動きがおかしくなったからばらばらに解体して生け捕りにしてやったの。もう一体は爆発したけどね。」
「すげえ。神業だ。」
シンヤは感動している。
どうやら、アントノイドの集合知生体は直樹のセラミックの刀を受けられなかったことで一瞬混乱したようだ。
集合知生体ゆえに他のアントノイドも混乱し、マミはその隙を見逃さず敵のクロノスを一挙に3機も無力化したのだった。
「皆さんお疲れ様でした。敵のクロノスの無力化を確認しました。作戦の第2フェーズに入ってください。」
シローヌから通信が入った。
「シロさんは人使いが荒いわね」
「『諸君、御苦労だった。』って言わないだけましだよ。」
マミがぼやいたので直樹が答えた。
「お前達聞こえていると言っているだろ」
シローヌの怒声が響いた。
直樹は笑いをこらえながらウエーブを頼りにデポジットしたロングレーザーの位置を探した。
ロングレーザーは緊急冷却が終わって使用可能になっているはずだ。
直樹がマミとシンヤにエネルギーをリロードしたロングレーザーを渡して待機していると、頭上をたくさんの爆撃機の編隊が通過していく。
やがて敵の機甲師団の上空に達した爆撃機は次々と急降下して爆撃を始めた。
「大部隊の割に対空砲火が貧弱だな。」
シンヤがつぶやくのが聞こえた。
「クロノスのレーザー射撃を当てにして対空砲を持ってきていなかったのだ。ガイア連邦は序盤戦で航空機の被害が大きかったので、使用を中止していたくらいだからな。」
シローヌが説明した。
人型ロボット、クロノスの性能に頼り切っていたラダマンティスの大部隊は、ガイア連邦軍の航空攻撃で一掃されそうな気配だった。
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