やめてー、やる気なくすからホンキで!
頼みの綱の二人は、小声で何か言葉を
今は互いに、背を向け合って「陰険モヤシ」と「筋肉ダルマ」に対している。
「じゃ、こーたい」
「げ。またモヤシかよ」
「いいじゃん。アンガイ、気ぃあってるし二人」
「飯抜きなお前」
「やめてー、やる気なくすからホンキで!」
挑発なのか本気なのか、そんな声が聞こえてきた。リズの背筋の震えが、気付けば消えている。
そうして位置を入れ替えた二人に、それぞれが笑いかける。笑い返した二人の表情は、悪童だ。
「やぁ、元気そうで何よりですねぇ。獲物は
「獲物扱いする割には、一回も俺を捕まえたためしがないけどな。――呼び声に答えよ、火精」
ランスロットが抜き放った剣の刃を、瞬時に
男がそれを、細すぎる腕の一払いで
「ふっ、相変わらずの一本槍ですか」
「リディ!」
「はいよっ」
無言で蹴り合っていたリードルが、ランスロットの言葉に跳び上がる。
そうして、リズがよじ登ったのと同じくらいの高さの枝を軽々と
リードルの跳躍と同時に、ランスロットも跳んでいた。大男を跳び越え、岩に着地する。
その上で、残されて一瞬だけ反応に迷った二人を取り囲むように、中空に剣で円を
「呼び声に答えよ、地精!」
「何?!」
「うお!?」
残されていた「モヤシ」と「ダルマ」が、ずぶずぶと地面に沈んでいく。
まるで地面が沼にでもなったかのようで、リズは眼を
ところが二人は容赦ない。
男たちが身動きの取れなくなるまで沈むと、弾みをつけて枝から飛び降りたリードルが、ランスロットの降りた岩を持ち上げた。
そのまま、首のあたりまでしっかりと埋まった二人の頭上に落とす。
「うそでしょ…人間技じゃないわよ…」
リードルの、どちらかといえば華奢な体のどこにそんな力が。しかも投げ終えて、平然としている。
「とどめ刺せたかなー?」
「いや、今までの経験からいくと…無理だろ。この程度だと」
「あ、やっぱ? おれほんっと思うよー、こいつらのセーメーリョク、ゴキブリを上回るね」
リズは、眼を回しそうになって慌てて、枝にしがみつこうとした。だが、手を
「っ、きゃーっ!」
「!」
がしりと抱きとめられ、衝撃はあったものの、無事は無事だ。おそるおそる眼を開くと、苦々しげな濃藍の瞳にリズが映っていた。
「あ…りがとう、ありがとう!」
「…こういうのはリディの担当だってのに、なんだって俺のところに落ちてくる」
そんなことを言われても困る、とリズは反論しようとしたが、意外にも丁寧に地面に下ろされ、機会を失った。
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