誰にも助けてなんて言えなかった
「あの、…リズって、呼んでもらえますか? ベス様…姫様には、そう呼ばれていたから…」
そう口にしたところで、リズは、話題の姫がもういないことを思い出して、一度は止まった涙がまた出そうになる。
それに気付いてか、ランスロットが厭そうなかおをした。
そして急に、こぶしが素早く動く。リズの眼前を
「考えてるふりして寝るな。リズ、手短に事情を話してくれ。できたら、この馬鹿が理解できるように簡単に」
「は、はい!」
反射的に、背筋が伸びる。
馬鹿と言ったのに先ほどのような反応がないのは、それほどに眠いからだろうか。ランスロットに小突かれながらも、リードルの体は揺れている。
リズは、息を吸い込んだ。
「姫様が
「質問三つ。一、お前はどうやってそれを知った? 二、何故俺たちに話そうとした? 三、これからどうしたい?」
我ながら理路整然とした説明からは程遠い自覚のあるリズは、それでも瞬時に質問を弾き出したランに、そうかこの人って頭がいいんだと、納得した。
人は見かけによらないというが、見かけの印象通りの人もいるようだ。
「…姫様が亡くなられたときに、私、姫様が横たえられていた寝台の
「偶然、ねえ。二点目は?」
「戦争を起こしたくないんです。私、生まれたのはリーランドなんです」
リーランドは、十年余前に滅ぼされた国だ。ある日突然、大量に召還された魔物によって国は大破した。
王族が一人残らず殺し尽くされたのはもちろん、国民全てに甚大な被害が出た。国内にいて生き残ったリーランド国民は少ない。
リズも、リーランドの孤児だ。
子どもを亡くしたという
孤児院に拾われ、リズ自身にリーランドでの記憶はほとんどない。小母さんの最後や事情も、後になって施設の職員から聞いたことだ。
ただ、戦渦の記憶だろう。赤黒い炎と飛翔する魔物は、今でも時折夢に見る。
「だから、阻止したくて…でも、誰にも助けてなんて言えなかった。姫様が亡くなられたのはごく一部の人しか知らないし、そのせいもあって、私もほとんど人前には出してもらえませんでした」
「俺たちにもふりかかることなら協力すると思った、わけか。ただ逃げ出すとは思わなかったのか? しかし、
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