目玉焼き

嫁は何かに集中し始めると、もう止まらない。

読む事、書く事、研究する事 etc

それは何週間も続くことがある。

その間、嫁がする基本的なことは、起きる、集中する、少しだけ食べる、慌てて仕事に行く、集中する、寝る、の繰り返しになる。

その期間を終えると嫁は痩せている、かなり細くなる。

それほど集中するのである。


わたしのスケジュールが忙しく、体調も万全ではないある日のこと。

残り物のカレーを食べていた。

嫁は今日も集中しているのでなんとなく話しかけづらい。


私は目玉焼きが食べたくなった。

勇気を出して嫁に聞いてみた。

「あの、目玉焼き作ってもらえる?」

すると「いいよ」の返事。


『おお、作ってもらえるのか』


嫁は立ち上がり、目玉焼きを作り始めた。


ジュージュー パチパチパチ ジュージュー パチパチパチパチ

ビチビチビチ ジュアー ジュアー ベチベチベチ


『目玉焼作る時って、あんな音したっけ?』

あああ、きっと黒焦げの目玉焼きができてしまう

嫁がなにかに集中している期間はだめだ。

『こんなことなら自分で作ればよかったかな』


わたしは、朝から目玉焼き一つで悩む自分が蟻のように小さな存在に思えた。


「はい!」

目玉焼きが目の前に現れた。


ちゃーーーーーーーーんとできていた。焦げてない。


『あの音なんだったんだ』


集中すると嫁は痩せて綺麗になる。それは素直に嬉しい。

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