第31話 変な味見

 嫁は料理を作るとき、味見をしない。

 料理は嫁にとって実験と同じである。

 実験が成功か失敗かは食卓での判断になる。勿論それにわたしも付き合うこととなる。

 

 しかし嫁は、食材が腐っているか、いないかの判断の時だけは味見をする。


 賞味期限切れの牛乳の味見。

 口いっぱいに牛乳をほおばる。

 腐っていなければそのまま飲み込む。

 もし腐っていたら……

 ボエーと吐き出し、「腐ってるー」と言う。


 賞味期限切れの豆腐の味見。

 口いっぱいに豆腐をほおばる。

 腐っていなくてもボエーと吐き出す。ほおばり過ぎだからである。

 腐っていても結果は同じだ。


 わたしは何年も思い続けている。

 まず、匂いを嗅げばいいのに。

 

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