第27話 サランラップの芯でネズミ捕り

 結婚初期、私たちが住んでいたのは、古いアパートだった。ある日、ネズミが出た。

 

 『どうやって捕まえようか……』と、考えていると、嫁がサランラップの芯を持ってネズミを追いかけ始めた。

 

 サランラップの芯でたたくわけではない。サランラップの芯の中に誘導して捕まえるわけでもない。なんと、サランラップの芯を縦に持ち、上からネズミにかぶせようとしているのである。

 

 小さなネズミとは言え、芯の直径はネズミとほぼ同じ大きさである。ネズミのすばしっこさは周知の通りである。かぶせて捕まえるなら、バケツや洗面器の方がいいに決まっている。わたしは呆れてしまった。


 が、次の瞬間!

 「ほーーーら入った、入ったよ!!」


 「えっ……」

 

  嫁が、芯を床に立てたままこちらを向いている。


 「本当に……?」

  

 「うん!」と自慢げにこちらを見る嫁。


 サランラップの芯の中を確認すると、確かにネズミが身動き出来ない状態で入っていた。だが、自慢気な嫁の顔が突然不安気になった。

 

 「どうしよー、ねーこれからどうすればいいの?」

  

 わたしが、床と芯の間に厚紙を挟んで捕獲終了。

 奇跡のような捕獲劇であった。


 その後、4匹目のネズミが出たところで、私たちは引っ越すことにした。

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