第10話 味噌汁随分残ってる?


 結婚して間もない頃のある日の夕食。

 

 味噌汁をおかわりしたくなって、私は嫁に聞いた。


 「味噌汁まだある?」


 「ちょっとだけあるよ。」


 私が鍋のところにいくと、味噌汁はまったく残っていなかった。


 「味噌汁ないじゃん」


 すると嫁が近寄ってきて鍋の中を指差し、いたってまじめな顔をしてこう言った。


 「ほら、ちょっとだけ」


 嫁が指を差した先には、鍋の中に入っているおたまの中に、大さじ一杯分程の味噌汁らしき液体が入っていた。


 それ以来、私はこう質問している。


 「ねえ、味噌汁ずいぶん残ってる?」


 嫁の「ちょっとだけ」には気をつけている。

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