第4話 これが愛かー パート1

 「ぎゃーっ!!」


 二階で寝ている嫁が何か叫んだ。

 一階でテレビを見ていた私は何事だろうと驚いた。


 でも……。泣きながら階段を降りてきた嫁の顔を見てもっと驚いた。


 鼻の横から血が流れている。

 結構な傷だ。

 鼻の下も傷がついている。


 慌てて訊いた。


 「どうしたの?」

 「猫にやられたぁ~!」


 うちの猫は洋猫で、太ってはいないが体が大きい。そして、運動神経が悪い。その猫が、どうしても窓枠に乗りたかったらしく、ジャンプしたのだが乗り切れずにいて、前足で必死になって窓枠に爪をかけ、後ろ足も爪を立てながら、踏ん張っていたらしい。そして、ベッドの窓側に頭を向けて寝ていた嫁の顔の上にズルズルと落ちてきて、嫁の鼻の横で爪をたてて踏ん張って止まったのである。


 嫁は泣きながら止血している。


 「明日病院行こうか?傷が残らないといいけど」

 「血、止まったね」

 「そう?止まった。大丈夫かな?」


 そんな話をしていると嫁が一人で感動しはじめたのである。


 「こんなに傷つけられたのに、私猫のこと全然許せちゃうし、今までどおり可愛くて可愛くてしょうがないの。……不思議」


 そして悟ったように言った。


 「これが愛なのかぁ~……」


 でも……。私は嫁のその愛を知っている。

 何故なら嫁のその愛で、私は今まで支えられ、生きてこられたからだ。


 幸い嫁の顔に傷は残らず、1週間程でほぼ治った。


 今、私は逃げ回る猫の爪切りに追われる日々である。

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