第57話 『血塗られた床』

 一番最近入院したときのこと。


 夜中。


 個室でした。


 病院の夜中というものは、得も言われぬ神秘的な雰囲気と、ぴんと張り詰めた気分が交錯します。


 いま、まさに、命の最後と戦っている方もあります。


 やましんは、ひん死という様な状態ではありませんでしたが、手術後でした。


 自分でお手洗いに行くことは、許可されました。


 で、お手洗いに行こうとしたら、床から廊下に、血がてんてんと、続いているのです。


 『あやあ。誰が、はいったのかしらあ。むむむ。怪しい。』


 と、思いましたが、看護師さんではないでしょうし、どうも、合点が行きません。


 もしかして、・・・・・


 あやしの存在が出たのか!



 と、ドアの直ぐ近くに、血で赤くなった、でっかい、ガーゼが落ちているのです。


 あらああ・・・・・・


 やましんのお腹のやや裏側には、穴が開いていて、確か、何かが、張ってありましたような。


 もも、もしや・・・・・冷や汗・・・



 『ぶーーーーーーー』(ナース・コール)


 『はい、どうしましたか?』


 『あのお、ちょっと・・・』


 

 「はいはい。どしましたか?」


 「あの、これが落ちていて・・・・・これって・・・」


 「ああ、やましんさんのものですよお。はい、張りますから、寝てください。ちょっと外を歩いたんでしょ。」


 看護師さんは、けろっと、おっしゃいました。


 ああ、おおごとでは、なさそうな、よかったあ。


 犯人は、幽霊ではなく、私でありました。


 人間の身体と言うものは、穴をあけても、中からお肉が盛り上がって、塞いでしまうのですね。


 少々、穴があいていても、あまり痛くはなかったです。(そりゃ、点滴三本くらいぶら下げてましたしね。)


 おふろに入れるようになるには、ちょっとかかりましたが。


 まあ、もしお風呂入ったら、お腹が満水になりますし。


 笑い話しのような、ちょっと、怖かったような。


 大手術ではなくても、手術は、やはり怖かったのです。


 この年は、三回手術いたしました。


 まだ、退職前でした。




  *****************    +++++++++++++++



                       『くたばれ! やましん』

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