第56話 『なぞ』

 以前、他のお話でも書いたのですが、これは、いまだになぞの怪現象です。


 母が亡くなる日の朝のことです。  


 当時、私は、片道おおかた、80キロくらいの車通勤をしておりました。


 職場からは、危ないから電車にして欲しいと言われていましたが、そうなると、朝5時くらいの出発となり、朝が苦手のやましんには、きついのです。


 また、電車内で、気分が悪くなる現象が起こることがあり、これも、かなり、恐怖でした。


 人間とは、あまり、会いたくないという欲求も、始まっていたのですが。


 しかし、なにより問題は、母が常にいる、老人ホームや、病院に仕事帰りに行くのが難しくなるということでした。


 これは、職場からは理解不可能とされておりました。


 施設に任せたんだから、あんたが、平日に行く必要ないだろ❗


 と、いうわけです。


 しかし、そうは行かないのが、やましんの実状だったわけですが、社会的には、仕事優先が当たり前ですから、批判されるのは、覚悟の上でした。


 で、その朝、いつものように、6時半くらいに出発しました。


 ところが、なぜか、カーオーディオがおかしい。


 CDがまったく、反応しないのです。


 おまけに、ラジオの、選局ができないときました。


 なにか、おかしい。


 そこで、遅刻しても、病院に行くべきでした。


 病院は、直ぐそばでしたから。


 でも、その日、やましんは、お仕事で、一種のカウンセリングをするお約束になっておりました。


 だから、職場に向かったのです。


 オーディオ装置は、到着まで、不調でした。


 職場に、母の様子が悪いと連絡があり、それでも、やましんは、その仕事だけは、やらなくてはと、思いました。


 昼過ぎ、面談が始まるすんぜん、病院から、是非、来て欲しいと、連絡がありました。


 これは、危ないと、判断し、結局、部下のかたに、残りをまかせて、そばの職場にいる奥さまに、先に行って欲しいと頼み、それから、高速を飛ばしました。


 ま、結局、やましんも、奥さんも、なぜか、同時に病院に着きましたが、10分前には、ドクターから、心臓が止まった、と、電話が入りました次第です。


 しかし、オーディオプレーヤーは、その後、普通の状態に回復していました。


 偶然か?


 はたまた、やはり、母が呼んでいたのか、あるいは、亡き父が知らせたのか、位牌だけがあり、見たこともない、兄が知らせたのか?


 オカルト現象を信用しない私には、ただひとつ、永遠に、解決不能なできごとです。(おはなしでは、オカルト現象ばかり、書いていますが。それは、フィクションなわけです。)


 それにしても、あのとき、病院に行かなかった自分は、やり直しがきかない、大失敗でした。


 かなり、悔やみました。


 これを境に、やましんは、現世とは、縁を切るべき時期が来たんじゃないか、自分の仕事は、済んだ、と、感じるようになりました。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


      『くたばれ❗ やましん』


 

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