第33話 『非常ボタン』
非常ボタンというものは、根本的に言って、押したらどうなるか、気になるものです。
しかし、上にキャップがあって、赤い色が塗られ、『非常時以外は押さないでください』とか書いてあれば、さすがに遠慮とうものが働くわけです。
ところが、部屋の中に、むき出しのボタンだけがあり、なんの表示も無かったら・・・・・
押してみたいものじゃあないですか。
やましんが小学4年生の頃、父の仕事の都合で、半年ほど、とある巨大団地に住んでいたことがあります。
そこだけで、十分『市』になるくらいの人口がある巨大な団地です。
まだ、大阪万博以前で、当時の最先端の、モダン住居でした。
でも、まだ完成する前の見学でありました。
ぽつん、と、さみしそうにたたずむ、ボタン君。
可哀そうだし、押してみたくなって当然です。
だから、ちょっと・・・押したのです。
すると、まあ・・・聞いたことはなかったけど、あたかも空襲警報の様な、すさまじいベル音が、巨大団地中に鳴り響いたのです。
いやあ・・・すごかっったですよお!!
両親は『なにごとか!』
とおどおどするし・・・
やましんは、知らん顔していますしね。
しかし、5分後か10分後。
ヘルメット被った作業着のオジサンたちがやおら部屋にどかどかと侵入してきました。
「ぼく、押しちゃあだめだよ。」
呆れた両親が・・・
「あんたが押したのか!」
と、絶句。
ああ、この恐ろしい犯罪の犯人が、我が子であったと知った時の両親の嘆きはいかばかりであったか!!
しかし、やましんは、まったく、最後まで知らん顔であったのだった。
これこそ、犯罪心理の核心なのである!
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【くたばれ やましん!】
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