第26話 『東京音頭』

 やましんは、子供時代、町内の盆踊り(やましんは『ぼろり』と呼んでおりましたが。・・)のメインテーマ曲であるこの音楽が大好きでした。これは今でも続いている盆踊りですが、自分の町内会で行われた後、隣の町内会でも実施されていて、距離的にはそんなに変わらなかったのです。


 おうちにいても、音は聞こえます。


 これは西城八十さん作詞、中山晋平さん作曲の名曲です。


 結構古くて、昭和7年に作られ当時は『丸の内音頭』というお名前だったそうです。


 問題は、やましん、踊るのはいやで、とにかく音楽を聴くのが大好きでした。


 そこで、なかなかこの曲とか『花笠音頭』とかが、かからないときは、放送席に行ってリクエストして、その前に陣取り、ちゃんと聞くまではがんとして、お家に帰らなかったのです。


 そういうところは、意外と図々しかったくせに、夜店でお菓子を買いたくて、十円球を握りしめていたけれど、どうしてもたくさんの人の中で『これ!』と言えず、お金が汗かくまで、じっと夜店の前でたたずんでいました。


 見かねた近所の子が、両親に報告。


 やっとこさ、応援に来てもらって、綿菓子を買ったものです。


 ところが、こいつがまた、成人して社会人になっても変わらなくて、もう20代も半ば過ぎ、遠い赴任地で、昼休み、おべんと屋さんのまえで、お金が汗かくまで並んでいても、どうしても周囲の人に追いこされて注文が出来ず・・・・・・


 とうとう、お店の人が見かねて「あなた! まだ注文してないんでしょ!」


 と言ってくれて、ようやく『・・あの、のりべん、お願いします。』


 という始末。


 昼休みは、もう、ちょっとしか残ってないぞ。


 しかし、やましんは、気分屋なので、うまく乗ってる日は、そうでもありませんでしたが。


 しかししかし、これは、実は今もそうでして・・・・


 先日、とあるリサイクルショップ様で、大勢の外国人客様のかたがたが、賑やかにレジを取り囲んでいて、お店の方は質問攻めになっており、やましん、なかなかレジまで辿り着けないのです。


 その活力はすごいもので、巨大なエネルギーを感じます。


 で、しばらくもぞもぞしていたら、顔なじみの店員さんが、走って来てくださいまして・・・、


 『やましんさん、お支払いなさりたいんでしょうか?』


 『はい。』

  

 『いやあ、そうだと思ったんだよねぇ~。このあたりで、なんかやましんさんがさっきから、うろうろしてるなあ~と。あっちで、みんなで言ってた。』


 『ども、ありがとございます。』


 まあ、こんな調子で、いまだに、まともにお買い物ができないやましんです。


 でも、このとき、思い出したのが、『東京音頭』と、汗かいた10円玉の事。


 あのときの10円玉さんは、その後、いったい、どうなったのかなあ~~~?


 やましんと同じように、もう、引退したかな?



  ********** 💰💧 **********


                       くたばれ やましん!




 










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