第22話 『君、なに積んでるの?』

 前回、ちょっと愚痴に走ってしまったので、元の路線に復帰いたしますが・・・


 やましん、15年ほど前までは、・・・つまり、親の介護で手が回らなくなるまでですが・・・趣味の音楽活動も、さかんに行っておりまして、所属団体の(しかもふたつ、いや、みっつかな・・・)会報作成やら、封筒詰めやら発送作業やら、演奏会の演奏者募集やら、パンフ印刷作業やら会計業務やら、今から思えば、正業のほかに、よくもあれだけこなしていたものだと、感心するばかりなのです。365日、フル回転でした。そのうえに、ちゃんと、楽器もお歌も練習してたのですから。


 しかし、やましんのことですから、失敗がない訳がない!


 ある、お天気の良い日曜日。


 やましんは、大量の会報を封筒に入れる作業を行い、その封筒を詰め込んだ段ボール箱を、車に、よっこらしょと積んで、移動しようとしていたのであります。


 駐車場でお金を払い、いつも通りに、わき道から大通りに出ました。


 なんだか、周囲の人がやたら騒がしい・・・・


 おかしいな、変だな?


 ま、いいか・・・・


 すると、バイクのおじさんが、大きな声で声を掛けてきたのです。


「上、上! ほら!」


 指さされたのは、やましんの、車の上です。


 なんだ、U.F.O.でも乗ってるのかしら?


 そのとたん、本当に、何かが飛ぶのが見えたのです!!


「あぎゃ~~~。封筒だあ!! 」


 いやあ、そうなのです。


 やましん、なんで、どこで、そうなったのか、いまだによくわからないのですが、封筒を詰めた段ボール箱を、車の屋根の上に乗せたまま走っていたのです。


『こらああ、大事だあ!!』


 大事ですよ。


 自動車を止めて見れば、段ボール箱さんが、屋根の上に必死で取りすがっているではありませんか!


 そうして、大通りには、封筒が今まさに、風に舞い、飛び交っているのであります。


 大慌てで、大きな路の、ど真ん中で、散らばった封筒を、車の隙間を縫うようにして、必死で拾い集めるやましん!

 

 そりゃあもう、はたから見たら、あまりにも、おかしくも、おぞましい、危なっかしい、哀れな光景だったことでしょう。


 幸い、飛び散った量が少なかったので、とにかく回収し、再度事務所に戻って、無くなった物がないかを、再確認したのでありました。


 バイクのおじさんが、大声を掛けてくれなかったら、更に事態は悪化したでありましょう。


 それ以来、車に乗る時は、屋根に何も載っていないかを、常に綿密に、チェックするようになったのでありました。


 それは、今もなお、ずっと、続いているのでした・・・・・




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                   『くたばれ! やましん』



























 













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