第10話 『落ちた』

 単純な、お話であります。


 丁度、21世紀の最初の年のこと。


 つまり2001年ですね。


 やましんは、とある町の郵便局に行こうとしておりました。


 おりしも、夕暮れ時です。


 暗くなったお空に、お星さまが恥ずかしそうに、姿を現したのです。


「おお~。いいお空だなあ~~奇麗なお星さまだなあ!~~」


  『どかん!!』


 まさか、足元に穴があるなんて、思いもしませんでした。


 ずらっと並んでいた、側溝のふたが、突然途切れていたわけです。


 なんだか、泥まみれにはなるわ・・・血が流れているわ・・・


 近所のホテルのトイレに飛び込んで、泥の部分は洗い流し洗浄。


 まあ、帰ったらお薬塗ろうね。


 しかし!


 その夜、痛みはどんどん強くなるのです。


 翌朝。

 

 例によって病院へ。


「これは、手、骨折してますなあ。完治には2か月くらいは、かかるかなあ。痛かったでしょ?」


 右手の指の骨折。


 なんで、足から落ちたのに、指なの?


 まあ、通勤するのには支障はないが、ぼくがどきっとしたのは当然です。


「おわ~。楽器できない。」


 右手は、実質以上に大げさな状態に。


 巨大なかまぼこ板のようなものを挿入されて、患部は腕から固定。


 「けんかしたのかあ~~~?」


 周囲から、そう言われまして、苦笑いです。


 そう言えば、こうしたことは、前にもあったな。


 学生時代に、松原湖にスケートしに行ったときです。


 凍った湖の上で、転倒。


 顔から落ちました。


 眼鏡がふんさい。


 この時は、目の上を5~6針縫う、けっこうなケガ。


 「喧嘩したんですかあ~?」


 首都圏の、とある眼鏡屋さんで、確かそう言われました。


 まあ、『けんかしたんです!』と言った方が、相当、かっこよさそうだったんですがね~~。


 やましんは、5年ほど前にも、赴任先の町で、どぶにハマっております。


 このときは、外れかかっていた側溝の鉄の蓋を、自ずから、け破ってしまったのです。


 まあ、幸いけがはなかったのでありましたが。


 それもまた、程よい夕方の事でありました。


 どこを見ていたかは、たぶん同じでしょう・・・。




     《くたばれ、やましん!!》











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