これは正統派ジュブナイル小説だと思う。

乙女ゲーム転生モノっていうだけで読むのを忌避している人にこそ、読んでほしいと思います。
これは単純な恋物語じゃなくて、ありふれた少女が、「乙女ゲームの世界」という殻を破る過程で人間的成長を遂げるお話だと思いました。
主人公が様々な人との出会いを通して、互いに影響を与え合い、さらに主人公の知らないところでも登場人物同士が影響を与え合う。たいていのネット小説では、主人公が一方的に影響を与えるだけで、主人公の内面に変化がありませんが、果たしてそれは自然な状態でしょうか?世界はそんなにツマラナイ人間ばかりでしょうか?
このお話では登場人物すべてが魅力的で、最初は「やな人だな」と思っても、話が進むにつれて愛着が湧いてきます。作者の人物描写がとても巧みだからです。どのキャラの人生も歴史が感じられて、薄っぺらさがない。全員分のスピンオフが読みたくなっちゃいます。