第3話 唐揚げ

日曜の夕暮れ時。

前日から漬け込んでおいた唐揚げを冷蔵庫から取り出して温めておいた油の中へと落としていく。


麻里はどうせ、今日もコンビニに唐揚げ弁当を買いに行くであろう斎藤の為に母から聞いた我が家直伝の唐揚げを作っていた。


斎藤さんも歳なんだし、唐揚げ弁当ばっかり食べてたらそりゃ健康診断にも引っかかって当たり前でしょ。少しは食生活にも気を配らなきゃ、歳なんだし。


ジュワジュワと唐揚げから泡が立ち始める。

しばらくすると油の中からこんがりと上がった唐揚げが上がってきた。

それをキッチンペーパーの上に乗せて油を切っている間にレタスと玉ねぎの上にトマトを乗せた簡単なサラダを作って唐揚げと一緒にパックに詰めてビニール袋に入れる。


あの人のことだから暇な日は大抵、家で寝ているだろう。夕食には少し早いけど今から届けに行こう。


麻里はサンダルを履いて玄関を出ると隣のインターフォンの前で立ち止まった。

今更ながらどうやってこの唐揚げを渡そうか。渡す方法まで考えていなかった。


手作りの唐揚げを渡す方法ってスマホで調べれば出てくるの?


いずれにしてもこのままここに居てもコンビニに唐揚げ弁当を買いに行くであろう斎藤と鉢合わせてしまう。


麻里は一度、家に戻ると油性のペンでビニール袋に「食え!!」とだけ書いて斎藤の家のドアノブに唐揚げ入りのビニール袋を掛けて家へと戻っていった。

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