第77話 パーティーは大事な人たちと
会場には大きなダンスホールがあり、脇に寄せられたテーブルには美味しそうな料理が並んでいる。中にはいれば楽器を携えた奏者達がクラシックぽい曲を奏でているのが見えた。
会場の中を見回すと、レオンとシオンがいた。同じデザインのフォーマルウェアを着用している。私の方に気が付くと二人とも動きを止めた。
「……」
「……馬子にも衣装ですね」
無言のレオンに対しシオンが呟く。
わ、わかってるよ!分かっててもそこは可愛いですねとか誉めてくれ!侍女さんが頑張ったんだから!
シオンの言葉に抗議するようにルイが私の腕の中で鳴いた。
「みゃーう、みゃ!」
「素直に誉めろ、と言っていますよ」
その声に振り替えると正装姿のクラウドとアレクがいた。さすが王子様、様になっていて格好いい。
「アザミ殿、今日のパーティはゲストを呼んである」
私がクラウドの首を傾げると同時に、会場のドアが空いて魔導一族の皆が入ってきた。
ミナモ様に双子の兄のリオン、お祖父様や井戸端会議仲間のおばちゃん……皆がパーティに相応しく着飾り入ってきた。
「お祖父様……皆さん…」
「クラウド殿下が我々を招待してくださったのだよ…よく、頑張ったな」
「私達がこうして怯えることなく村を出られるようになったのは、アザミ様のお陰です」
皆から口々に礼を言われ、ぎゅっと唇を噛み締める。
よかった、皆が…これで自由に暮らせる。
村の皆と喜びを分かち合っていると、クラウドが声を上げて注目を集めるとパーティ開始の挨拶をする。
「皆様、本日はクラルテ国にお越しいただきましてありがとうございます。是非時間を忘れて楽しんでいってください」
その声と共に流れていた曲がダンス用の曲へと代わり、村の人達がダンスホールで思い思いのダンスを始める。
皆の嬉しそうな顔を見ていると私まで嬉しくなるから不思議だ。
「アザミ様、ちょっと良いですか」
ふと声をかけられて振り替えるとレオンとシオンが手招きしていた。
御馳走を食べたくてうずうずしていたルイをテーブルに降ろし「食べ過ぎはダメよ?」と念を押してルイが頷いたのを確認すると私は双子の方へ向かった。
双子が私の手を引いて出たのはバルコニーだ。
「アザミ様、この度は魔導一族に平穏を与えてくださったこと深く感謝申し上げます」
そういって腰を折り曲げ頭を下げたのはレオンだった。公の場という事もあり敬語だが、ほぼタメ口で話しかけられていた身としては少し違和感があるけれど仕方ない。けれどぱっと顔をあげるとすぐに人懐っこい笑みを浮かべた。
「本当にさ、アザミ様が族長でよかったと思ってる」
「貴女にお仕えできたこと、嬉しく思います」
レオンに続いてシオンも微笑む。氷点下の笑顔ではなく、大分前にお祖父様に向けていたような優しい微笑み。
二人が着ているいつもの違う服、そしてパーティという少し浮かれた気分もあったのかもしれない…それに加えてこのイケメンどもの笑顔である。
私は急に頬が熱を持つのを感じた。顔が赤くなったのを見てだろう、双子の顔が優しい微笑みから少し意地悪そうな微笑みに変わる。
そして私の両サイドから手を取り、逃げられないようにホールドされる。
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