第75話 フラグ完全回避
翌朝、私達は東の国の城へと向かっていた。
メンバーは私とクラウド、レオン。そして何故か作十郎がいる。騎士達は昨晩のダメージが大きかったらしくクラウドの命令で大人しく休んでいる。
修二はアドニス王へ一連の出来事を詳しく報告するべく、先に城へ出向いているとのことだった。
私とレオンは染色の魔法を使わないで町を歩いてきたので、町の人の視線が少し刺さる。
東の国とも不可侵条約を結んでもらえたら、魔導一族が脅かされる心配もしなくて良いだろう。
つまり、破滅フラグが完全に回避出来たということだ。
クラルテ国にいるシオンやアレク、そして魔導一族の村にいるお祖父様や村の人たちにはレオンが連絡を取ってくれた。
その際、レオンは私が鬼と戦った事を武勇伝として吹聴したらしくそれを聞いたシオンの声は冷えきっていたとか……。
帰ったら…お説教は免れないかもしれない……。
それでも、もう私や魔導一族が破滅することはまずないだろう。
やっと肩の荷を下ろすことができたような気持ちを抱えながら、私はアドニス王と謁見する。
城について、謁見の間に入ると既にアドニス王と修二が待っていた。私はスカートの裾を軽く持ち上げると深々と頭を下げ挨拶をする。
「面を上げてくれ。魔導一族、族長アザミ殿。此度の助力、誠に感謝する。これが不可侵条約の書面だ」
アドニス王が合図すると修二が書面とペンをもって私の前にやって来る。その内容をしっかりと確認し、署名をすると私はもう一度深く頭を下げた。
「アドニス国王陛下。不可侵条約を結ばせていただけた事、魔導一族を代表して感謝申し上げます」
「うむ、これからはひっそりと隠れ暮らす事はない。我が国もクラルテ国も魔導一族に害為すことはないし、これからは少しずつでも交流して行ければと思っている」
「お気遣い感謝いたします」
こうして東の国との不可侵条約も無事に締結することができた。
◇◇
その日のうちに、私達は一度クラルテ国に戻ることにした。
クラウドがいつまでも国を離れているわけにもいかないし、私もシオンと合流して一族の村に帰りたかったからだ。
そして何より、私の癒し!ルイに会いたい!癒し不足すぎてつらい!
「アザミちゃん帰っちゃうのかぁ…残念ー」
馴れ馴れしく私の名前を呼びながらくすんと泣き真似をするのは修二だ。
東の国の外れで私達を見送ってくれることになった。
「……また、来てくれ師匠」
少し寂しそうにする作十郎に私は苦笑浮かべる。
「だから師匠になった覚えはありませんよ」
「いや、シリウス殿下に渇をいれた姿はやはり見習うべき姿勢だったと思う。そして何より、その心意気美しいと思った。認めてもらえなくても、俺は師匠と呼ばせてもらう」
つまり私の意見は聞いてないってことですね………。ちくせう。
「アザミ様に弟子入りしたいならまず護衛の俺を越えてからにするんだな!」
「そうか、わかった!越えられるように精進しよう!」
レオン、話をややこしくするな!サクちゃんもわからなくて良いから!
「……これから東の国はどうなる。唯一の王位継承者が…罪を犯してしまっただろう」
ぽつりと呟いたのはクラウドだ。
「…シリウス殿下は王位継承権を剥奪されました。でも大丈夫ですよ、まだ公にはなってませんけどシリウス殿下の下には小さな妹姫がいらっしゃるんです。まだ生まれたばかりの姫君ですが、きっとこの国を良くしてくださると信じています」
「…そうか、いつかその姫君にお会いできるのを楽しみにしている」
クラウドはそう告げると、クラルテ国に向けて歩き出す。その後ろを騎士達がついていく。親しく交流していた友人が囚われて、思うところがあるのだろう。
「それでは私達も失礼します、お世話になりました」
「アザミちゃん、また遊びにおいで。その時は俺が町のいろんなところ案内するからさ」
「師匠、師匠の村へ俺もいつか訪れても良いだろうか?」
「もちろん、いつでも遊びに来て下さい」
そういって握手を交わし、私達は東の国を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます