第74話 東の国、国王
アドニス王の姿を見た私は、慌ててシリウスの胸ぐらを掴んでいた手を離す。
ヤバイ……ヤバイ!国王陛下の前で王子の胸ぐら掴んだよ!?しかも平手打ちもかましちゃったよ!?
気がつけば修二と作十郎はアドニス王の足元にひざまづいている。
アドニス王は兵士を連れてこちらまで歩いてくると、私の横を通り抜けシリウスの頭に思い切り拳骨を落とした。
「―――っ!!」
痛みに呻くシリウス。
「連れていけ。シリウス、これからは厳しく教育し直してやるから覚悟しておけ」
アドニス王がそう命じると、兵士達がクラウドとレオンからシリウスを引き受け連行していく。
「…ご無沙汰しています、アドニス陛下」
クラウドが恭しく礼をするとアドニス王は目を細めて頷いた。
「この度は…うちの愚息がすまないことをした。迷惑をかけた事を詫びよう、そして解決しようと動いてくれたこと礼を言う」
「いえ…我々の力だけではありません。彼女達……魔導一族が助力して下さったお陰です」
「……魔導一族…?」
クラウドの言葉に、アドニス王が此方を見たので私とレオンはびしっと背筋を伸ばして頭を下げ挨拶をする。
「御初にお目にかかります、アドニス陛下。私は魔導一族の族長、アザミと申します。此方は護衛のレオンと申します」
レオンが一礼し、私の言葉を聞いたアドニス王は首を傾げる。
「魔導一族は…美しい金色の髪をしているときいていたのだが…?」
「あ…今は魔法で染めているのです」
私とレオンは髪に触れて、染色の魔法を解除した。すると一瞬で髪の色が黒から金色に戻る。それを見たアドニス王は驚いて目を瞬かせた後、ふっと微笑んだ。
「美しい金色だ。クラルテ国のアルフレッドから話は聞いている、不可侵条約を結んだようだな」
「…はい」
「うちの愚息を叱ってくれた礼だ、我が国も無条件で不可侵条約を結ばせてもらおう」
「…!」
「朝になったら城まで御足労願いたい、条約締結はその時に。私は先に城に戻っているので、また後程」
アドニス王はそう告げると一つ優しげな微笑みを残して、城へ戻っていった。
「あ、俺が城まで案内しちゃうよー、ついでに東の国観光巡りとかしちゃう?」
アドニス王を見送っていた私達は修二の間延びした声で我に返る。
「……それより、休ませてはくれないか」
クラウドが酷く疲れた声でポツリと呟く。
確かに時間帯としては真夜中である。何時間も野外で待機していた騎士達やクラウドやレオンも疲れきっているだろう。
私も魔力を使いまくったのでそれなりに疲労はしているが、歩けないほどではない。
「ですよね、じゃあ俺の顔馴染みのいる宿屋に案内しますよ」
こうして私達は東の国で束の間の休息を得ることになった。
ちなみに、宿屋は可愛い看板娘のいる宿で、彼女もまた修二の取り巻きの一人だったと言うことを後から聞かされた。
んなもんしるか!この女たらしめ!
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