第66話 弟子入り志願

………何故こうなった。




私は道場の畳の上で作十郎と向かい合いお茶を啜っていた。少しだけ距離をあけてクラウドとレオン、修二がお茶を飲んでいる。




鬼の召喚者を教える代わりにクラウドとレオンと御茶をしたい、なので作十郎の相手をしてくれと言われた。


レオンとクラウドは断ろうとしたが


「俺男子会って憧れてたのよ、俺に集まってくるの女の子ばっかりでさーいやぁモテるって困るよね…ってことで男同士にしかできない話、しちゃおうぞ!」


と言う(若干口調が女子っぽい)修二に強引に引っ張られて少し離れたところに座らされてしまった。




別の部屋にいるわけでもないし、目に見えるところにいるから大丈夫と判断したのだろう。クラウドとレオンは修二の話に付き合っている。聞こえてくる話は恋ばなみたいだ。






男の子も恋ばなするんだねぇ…私も村に帰ったらミナモ様と、村の女の子達と恋ばなしたい…ミナモ様ご夫婦の、馴れ初めとか聞きたい……。






「…………」




それよりさっきから目の前のミスターポニーテールが黙っているだけど。


あれだよね、修二が私からクラウド様とレオンを離したのってこのミスターポニーテールが私に用事があるってことだよね?


ゲームのキャラのサクちゃんはこんなにはっきりしない子じゃなかったけど…寧ろクールで、初対面の時みたいに言いたいことをバッサリ言うような…。




「………」


「私に言いたいことがあるのでしたら、仰ってください」


「…っ」




なかなか話し出さない作十郎に、喋るように促すと暫く視線をさ迷わせた後、彼は意を決した様にようやく口を開いた。




「お前は…初めてあった時に、力だけでは救えないものもある、と言ったな。どういう意味だ」






…そんなこと言ったっけ?


体力つけて、剣術と魔法の力をつけてやるって意気込んだのは覚えてる。


剣術は双子にめっちゃ反対されたから、無理だったけど。


えーっと…あー…言った、かもしれない…




「確かに物理的に誰かを守るには、貴方があの時仰ったように力がないと叶いません。ですが、目に見えないもの…人の心はどんなに力があっても守れるものではありません…貴方が力が全ての様なことを仰っていたので、つい反論してしまっただけです。力不足を指摘されて、反抗してしまったと言うのもありますが………それと、あの時は助けていただいてありがとうございます」






つらつらと喋った後、そういやお礼言ってなかったなーと思って今更ながら礼を告げる。


すると作十郎は、困惑したような表情を浮かべ暫く思い悩むようなしぐさを見せた後、床に両手をついて勢い良く頭を下げた。


所謂土下座である。






「俺を、お前の弟子にしてくれ!!!」






私だけでなく近くにいた三人も一瞬ぎょっとしたのは不可抗力だと思う。




おい、サクちゃん、クールキャラ何処に落としてきたんだい?










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