第62話 忍一族、頭領
ゲームの中で彼を紹介しておこう。
修二・リィル・モンド。
東の国における国王直属の諜報員、忍一族の頭領。(但し忍べていない)
幼い頃孤児になってしまったのを、先代頭領に拾われ、忍としての才能を発揮。(但し忍べていない)
成長するにしたがって見目麗しくなった顔立ちを利用して、情報を得るようになる。(寧ろ忍ぶ気がない)
度々城下町に現れてはハーレムを築き上げてる、女好きのポジションである。
彼のルートでは、グッドエンドだと魔導一族が破滅してしまうが、バッドエンドでは寧ろ魔導一族が悲願を果たしてヒロインを亡きものにし繁栄を極めるルートになる。
おまけ情報だが、東の国に最初に来た時に遭遇した、チンピラを追い払った攻略対象の相棒だ。
「……アザミ様、見ちゃいけません。あれは目の毒だ」
「レオンに同意する」
クラウドとレオンが私を然り気無く修二から遠ざける。
私としても、もし取り巻き女子に目をつけられる様な事になったら面倒なので、近寄らないに限る。
うん。いかにも毒がありそうな、関わったら破滅フラグが立ちそうなやつだから逃げるに限る。
ヒロインが現れるまで関わる必要性は感じないから放置だ、放置。
いや、以前は様子見程度なら…とか思ってたげどね?
クラルテ国と不可侵条約を締結した今の魔導一族は、いくら東の国だとしても簡単に手出しできない状況なのですよ、ふっふっふ…。
「何処か座れるところにでもいくか?」
「それはいいな、行こうかアザミ殿」
「あ、はい。そうですね」
促されるままに女子の群れへから足を背ける私は気が付かなかった。
沢山の女子に囲まれた修二が此方を見て、不敵に微笑んだ事に。
私達は近くのお茶屋さんに入ることにした。
四人用のテーブル、その両サイドに座布団の乗った木の椅子が四脚置かれている。
私が片方に座ると、クラウドとレオンは私の正面に座った。
お前ら、あれか、隣同士に座りたいって?
あぁもう本当に仲いいな!
暫く封印してた私の腐った部分が目覚めるじゃないか、御馳走様です。
何か美味しいもの頼んで半分ことかするといいさ!寧ろしてください、その光景がみたいです。
…え?騎士達が真面目に仕事してるのに、こんなところでお茶してていいのかって?
他に何か出来ることを考えては見たものの、皆無だったんです…悲しいことに。
私達に今、出来ることは騎士達から連絡が来るまで待機すること。あと東の国でそれとなく鬼について、可能な範囲でさりげなく調べる事。
ん……、ちょっと待てよ?
「レオンの姿を消す魔法を使えば、騎士さんたちに任せなくてもあの場所を見張れたのでは無いでしょうか?」
そうだよ、目立たないように出来るプロフェッショナルいるじゃないか!
「あー…俺の姿を消す魔法は、自分に使うなら効力が長続きするんだけど…人に使うと効力、というか持続時間が極端に短くなるんだ。五人全員に使ったら三分も持たないと思うぜ。ついでにいうと繰り返し使うこともできない、結構魔力消費量がデカいからな………ごめんな?」
私の言葉にレオン申し訳なさそうに眉を下げる。
なんかそうしてるとワンコが主人に怒られてしょんぼりしてるみたいだな……忘れてた、この子柴犬だったわ。
「そうだったのですね…無理をいってしまってすみません」
「気にすんなって」
そういってレオンは微笑む。
「………少し、いいだろうか」
すっとクラウドが言葉を挟む。
「このわらび餅と言うものを、食べてみたいのだが…いいだろうか…?」
黙ってお品書きを見てると思ったら、クラウド様、わらび餅が気になってたのか。可愛いなおい。
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