第63話 てぃーたいむ

「じゃあ、俺達も何か頼むか。アザミ様は何がいい?」


「私は…えっと…あ、これにします」


お品書きを眺めるとお団子とお茶のセットを発見したのでそれにする。


「りょーかい」


レオンは店員さんを呼ぶと、クラウド様のわらび餅と私のお団子セット、そして自分が食べるのかあんみつを注文した。






あんみつが好物なのかもしれない。


もしこの世界に誕生日の概念があるなら、その日はあんみつをご馳走してあげようと思う。




「この国の菓子は不思議なものが多いな、興味深い」


他の席で美味しそうにお団子やら羊羮やらを食べている人たちをちらりと見つめ、クラウドが告げる。


「クラルテ国のお菓子はケーキとかクッキーとか、そう言ったものが多いのでしたね」


私がそう言うとクラウドは頷く。


「あぁ、他国の食文化と言うものは興味が沸く」


「なんなら、魔導一族の食文化も教えてやろうか?」


楽しげに笑いながらレオンが尋ねると、クラウドは目を輝かせた。


「いいのか?是非頼みたい」


「じゃあ今度は魔導一族の村に招待してやらねぇとな。アザミ様、いいか?」


レオンの言葉に私は嬉しくなって頷く。


「もちろんですわ、楽しそうですもの」




こうして交流していけば破滅フラグが遠退いて行くかもしれないし、なにより私が目福である。




そんな話をしていると店員さんが注文したものを配膳してくれた。


レオンがにっこり笑って礼を言うと、頬を赤くして店の奥に引っ込んでしまった。


相変わらずのイケメン力発揮である。




いや、私は見慣れてきたからいいけど。


イケメン見慣れてきたとか贅沢だわ…




そんなことを考えながらお茶を一口飲んでちらりと二人の方をみる。


レオンは美味しそうにあんみつを口に運んでいるし、クラウド様は………。




「これが……わらび餅か…」




わらび餅を食べるために添えられた竹細工の楊枝で、きな粉のかかったわらび餅をツンツンしている。そしてその弾力に「おぉ…」と感嘆の声をあげている。






何なんだこの人、可愛い過ぎかよ。


未知の食べ物に出会ったリアクションが可愛いよ。


以前、私を励ましてくれたイケメン顔はどこに?いや、そのままでもいいよ、可愛いから。




おっと、人の事より自分のお団子を堪能せねば。




私の頼んだお団子セットの御団子はなんと、ずんだ団子なのです。


臼緑のずんだがとても美味しそうです!




枝豆は魔導一族の村でも栽培してるので、今度作ってみようと思う。




最初の一口、串を持ってそのままパクリと食べる。もちもちのお団子に、ずんだの風味が広がって美味しい…。






私がずんだを堪能していると、すっかりあんみつを食べ終えたレオンがじっとこっちを見ていた。クラウドに至ってはわらび餅のきな粉が落ちないように格闘している。






はっ…もしやレオン、私のずんだ団子を狙っている?


しょうがない、お姉さん(前世でも享年はレオンより年上だからお姉さんでいいの、おばさんとか言わないで!)が一口分けてあげよう。






「そんなに食べたいのでしたら、おひとつどうぞ?」


私は口をつけていない部分のずんだ団子を串から外し、空になったあんみつのお皿にのせてやる。


するとレオンはあー、とかうーとか唸った後ずんだ団子を食べて「ん、うまい」と微笑んだ。






私は美味しいものが人を笑顔に出来るのは、全世界共通だと確信した。




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