挿話 騎士-士月-

クラルテ国の騎士になって何年たったろう。


俺、士月・マーロン・セルゲイは東の国に向かわれたクラウド殿下達を見送りながら、ふと昔の事を思い出した。




幼い頃、親に捨てられた俺はアレクセイ殿下に拾われた。


恩義を感じ、アレクセイ殿下に遣えたいと言えば騎士としての教育や訓練を与えてくださった。




読み書きもできなかった俺は必死に努力をして、騎士になることができ今に至る。「伊月」とい仲間とも出会えた。


同じ「月」という字が入っているのは俺たち二人の名前をアレクセレイ殿下がつけてくださったからだ。


故に俺達はアレクセレイ殿下の親衛隊でもある。といっても伊月は俺が巻き込んだのだが。






「はぁ……いくら命令と言えどアレクセレイ様と長時間離れているのは………しんどい」


俺が呟くと伊月は顔をひきつらせる。


「士月は本当にアレクセレイ殿下が好きだよなぁ、ガチ勢ってやつ」


「当然だ、俺の人生全てはアレクセレイ様の為に!」


「うん、重い」


「アレクセレイ殿下の肖像画を寝室に飾りたいくらい俺は真剣にお仕えしているんだ!」


「止めて!お前俺と同室なんだから!」


「何をいう。アレクセレイ殿下親衛隊、副隊長とし名誉だろう?」


「うわ、こいつマジだ!」




あちゃーと頭を抱える伊月の横で、魔方陣の見つかった洞窟を見張りながら、俺はクラルテ国にいらっしゃるアレクセレイ殿下に思いを馳せるのだった。



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