第61話 また一人

クラウドの話を聞いてレオンは暫く唸っていたが、ガシガシと乱暴に頭をかくとバっと顔を上げた。


「もういっそさ、召喚した奴が此処に戻ってくるかも知れねぇし見張っておけばいいんじゃねぇの?」




おっと、考えるのが面倒になったパターンかな?




「そうか。犯人は現場に戻ると言う、その価値はあるな」




クラウド様、その知識どこで得たんですか!?


気になります!






意外にもクラウドとレオンの意見が一致した事もあり、私達は現場近くに張り込む事になった。
























◇◇


張り込むことになったはず、なのだが。


何故か私は東の国にいた。


レオンと、クラウドと一緒に。




原因は騎士の一人、士月の発言だ。


「鬼を召喚した人間がいつくるかわかりません、長い間クラウド様や族長様を御待たせするわけにもいきません。なので東の国で待機していただければと思います」


何故東の国で、と進言したかと言うとクラルテ国に帰るよりも東の国の町の方が距離が近く、もし犯人が現れた時に短時間で合流できるから、という理由である。






遠回しに、隠れて見張らないといけないのに五人もいると邪魔だから、どこかに行ってほしいって言われた気がするんだけどなぁ……もしかして士月さんて、シオンと似たようなタイプかもしれない、いや、シオンなら直接的に『こんなに人数がいても邪魔になります』とか言いそう…






私も同じ意見なので文句はないけれど…。


ぞろぞろいて目立ってしまえば犯人は寄り付かないだろう、確実に。




なので、落ちていた魔石にレオンが手を加え二分割にし通信できるように魔法をかけ、その片方を士月に渡してある。


これでなにかあればすぐに連絡が取れるはずだ。


つくづく魔法というやつは便利である。




ちなみに、東の国に入る前に私とレオンは髪に染色の魔法をかけている。


東の国で魔導一族とバレればどうなるか分からないので、ローブも騎士二人のいるところに置いてきた。


クラウドの場合、顔バレしてるのは東の国では王族だけなので変装の必要はないと判断された。






「…アザミ殿は黒い髪も似合うな」


染色の魔法で黒髪になった私を見てクラウドが微笑むと、レオンが眉を寄せ口を挟もうとしたその時だった。




「きゃあぁ、修二様がいらっしゃったわ!」


「相変わらず素敵ね」


「っ、今、私を見て微笑まれたわ!」


「何いってるの、私を見て下さったに決まっているでしょう」


「修二様、贈り物受け取ってくださいませ!」


黄色い声と何人もの女性に囲まれて、一人の男が現れた。






ダークブルーの髪に黒い額当てをつけた見目麗しい男―――。


私はその人に見覚えがある。


彼は東の国での攻略キャラクターの一人、修二・リィル・モンドだからだ。


別名、『忍ばない忍者』である。


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