第57話 だから耐性ないんです

「信じよう」


クラウドは目を細めると私の髪にそっと触れた。


「…まずやってみて、駄目だったら次を考えればいい。思い悩むのはその後だ」


驚く私にクラウドはくすっと笑うと私の髪を指先に絡めて撫でる。


「以前、アザミ殿が私にいった言葉だ。…私はこの言葉に勇気をもらえた。だから私は、勇気を貰えた礼をアザミ殿への信頼で返そう」






自分の言葉が…誰かの勇気になるなんて。


信じて貰えるなんて。






単純に、嬉しいと思った。


こんな私でも、誰かの役に立てたとしたならとてつもなく嬉しい。


「ありがとう…ございます」


声が震える。




ヤバイ、嬉しくて泣きそうだ…。


今世は涙腺脆くて困るわ…






涙が溢れそうになるのを笑って誤魔化す。


すると不意にクラウドが身を乗り出して私の頬に、軽く口付けた。


吃驚して涙が引っ込む。






ほわっつ…!?!?


今、この人なにしたの!?挨拶!?挨拶ですよね?!






顔が赤くなるのを感じながらクラウドを見ると悪戯っぽく笑われた。


「ふむ、励まそうと思ったのだがこれは思った以上に役得だな。泣きそうな顔は牽かれるものがある」




お、ふ!?え、何、S発言ですか!?


励まそうとしてくれてありがとう、でも無理!


こちとら耐性ないんだぞ!


お前ら兄弟揃って恥ずかしいわ!!






頬を熱が引かないのを自覚しながら拗ねたようにクラウドを軽く睨むと、笑いながら頭を撫でられる。




アザミ様よりクラウド様のが年上だから当たり前なんだけど…子供扱いされてるみたいだ…






ひとしきり笑い終えたクラウドは話を元に戻す。


「それで、鬼を召喚について他に分かっていることはあるか?」


「街の方は、東の国との国境近くで鬼に襲われたと言ってました。鬼は召喚した人間から遠く離れて動く事ができません、ですから近くに召喚した人間が居たと思われます」






これはゲームの知識だ。


召喚した鬼を操る時は必ず近くにアザミ様がいた。


鬼の召喚中は魔力を鬼に供給し続ければいけない。


供給を維持しなければ、制御不能となり近くの生き物を見境無く襲う。


そして魔力が尽きれば消滅してしまう。


供給するためには常に近くにいなければならないのが条件だ。




「成る程…国境付近を調べる必要がありそうだな」


「クラウド様、私が行きます」


「アザミ殿が?」


怪訝な表情を浮かべるクラウドに私は頷く。


「…わかった、ならばアレクセレイや護衛の二人にも話して策を立てよう」


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