第56話 自分なりの向き合いかた

「それで何故あんなに焦っていたんだ、鬼と関係あるのか?」


クラウドに問い掛けに私は目を伏せる。




鬼が召喚され被害が出てしまった以上、その対策をとらなくてはいけない。


魔導一族が関わったと疑われないように、そして被害を出さないように。




どう伝えれば正解を導き出せる?


前世とかこの世界が乙女ゲームで、とかそんな説明したとしても信憑性にかける。




「…鬼の事は…昔、何かの文献で見て知っていました。鬼は、魔力が強いものによって召喚されます…そして召喚した人間の思い通りに動きます。…それほどまでに魔力が強い人を、私は知っています」


「…護衛の二人か?」


怪我人を治癒魔法で治した事を聞いそう思ったのだろう。


でも違う。






「私です」






小さく呟いたはずの言葉は、しんとした部屋にやたら大きく響いた。


クラウドは目を見開いた後、じっと私をみる。


「…アザミ殿が鬼を召喚したと?」


「違います!それは断じて違います!」


予想通りの言葉を必死に否定する。


「信じてもらえないかも知れませんが…私はそんな事しません。せっかく不可侵条約を結ぶことが出来たのに、この国に、国王陛下に信じていただけたのにそれを無下にするような真似は絶対に致しません」


じっとクラウドを見つめる。






私は、策略を立てられるほど頭は回らない。だからいつだって真っ向勝負するしか出来ない。


前世では「もっと裏を読め」とか「深く考えろ」とか言われてきた。


考えてない訳じゃない、考えた結果が相手と真正面から向き合うことだと感じた。


それ故に相手の悪いところをハッキリ言ってしまったりして嫌われることも多い。




要は建前と本音を見分けるのがとても苦手なのだ。


だから相手の言葉を鵜呑みにするし、「何かあったらいって?」とかいう明らかに建前の言葉を信じて告げた結果、友人から縁を切られたりもした。






それでも私はやっぱり相手にはきちんと向き合いたい。






それが全部正解だとは思わない、人によっては不正解として扱われる、だから嫌われることも多い。




でも、それが私の相手に対する誠心誠意だから。




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