第51話 可愛いなら仕方ない
「では、街をご案内しますよ……ああ、護衛の方はついてこなくても構いませんよ?何があってもアザミは僕が守りますから」
「御気遣いありがとうございます。しかしクラルテ国の第二王子にそのような事をさせる訳にいきませんので、お気になさらず」
「私達は族長をお守りするのが仕事ですから」
何やら楽しそうなアレクと双子の邪魔にならないようにと、城門前のメインストリートへと視線を向ける。
すると何やら美味しそうな焼き菓子を売ってるお店を発見した。
「ルイ、あれ食べたことある?」
頭の上に問い掛けると、ルイはもそもそと頭の上から降りてきて私の腕の中に収まり、屋台をじーっと眺めてからふるふると首を横に振った。
「お祖父様からお小遣い貰ったし、食べてみる?」
「みゃうっ!」
首をかしげて尋ねるとルイは嬉しそうに頷いた。
「あのー…アレク、私、屋台を見て回ってみたいのですが…いいでしょうか?」
まだ楽しそうに話をしてる三人に声をかけるとピタリと会話を止めた。
あ、邪魔しちゃったかな…なんかごめん。男同士の会話に夢中になってたんだよねきっと。
その辺、一応でも女という分類の私にはわからないので申し訳ない。
「もちろん、構いませんよ。どちらから行きましょうか?」
「あの屋台のお菓子を食べてみたいのです。ルイも気になるみたいで」
「みゃ!」
アレクは会話を抜けると私を屋台までエスコートしてくれる。
ちらりと双子を見るとどちらも明らかに不機嫌そうな顔をしていた。
ご、ごめん…会話の邪魔して。
心の中で謝りながらアレクと屋台に向かう。すぐ後ろをレオンとシオン、そしてアレクの護衛と思われる騎士さんが二人ついてきた。
「すみません、焼き菓子を戴けませんか?」
「あいよ、今焼き上がったばかりさ!……おっと、これはアレクセレイ殿下、この様な庶民の店に足を運んでいただいてありがとうございます」
屋台の店主に声をかけると、店主はアレクを見て深々と頭を下げる。
「その様に畏まらないで下さい、今日は客人を案内しているのです。良ければ店主お薦めの物をいくつかいただけますか?」
「客人……はぁ、こちらの女性…あぁ、後ろの二人も魔導一族の客人とは…長く生きてみるもんだ」
アレクの説明に店主は目を丸くした後、美味しそうに焼き上がったお菓子を袋に詰めて、こちらに差し出してくれた。
受け取って御代を渡すと、店主はにこやかに笑う。
「不可侵条約を結んだこと、国王陛下から伺いました。よかったらまた来て下さいね、うちは大歓迎ですから」
「はい、もちろんです!ありがとうございます!」
社交辞令だとしても、そういって貰えるのは嬉しい。
私達は屋台を後にするとアレクに案内されて広場にやって来た。
この広場は街の中心部でもあるらしく、大きな噴水があり、キラキラと水が光を反射して光っていた。
少し行儀が悪いかもしれないが、ベンチもないので噴水の淵に腰掛ける。
私とアレクの間にルイがすとんと座り、待ちきれないようで袋を見ながらまだ?まだ?と視線で訴えてくる。
「ルイさんはお菓子が大好きですね、僕のところに遊びに来たときも御出ししたお菓子、ほとんど完食されていきますから」
それを見ていたアレクがくすっと笑う。
完食!?ルイ、そんなに食べてるの!?
「いつもルイがすみません」
申し訳なさそうに謝るとアレクは「気にしないで下さい」と微笑む。
「ルイ、あんまり食べ過ぎるとぷくぷくに太って体に良く無いんだからね?食べ過ぎは駄目だよ?」
そう告げるとルイはしょんぼりと俯いた。
あぁぁ、可哀想で可愛い…。
「食べるときは少しずつにしよーね?」
「みゃーう」
子供に言い聞かせるように告げて頭を撫でてやれば嬉しそうに頷く。
何故だろう、視界の端で私の護衛が口許を押さえて震えてる。
アレクも何故かじっとこっちを見てる……。
あ、子供みたいって思われてるのかも…
ルイを撫で終えた私は焼き菓子の袋を開けると、その一つをルイに差し出し出した。
ルイに甘い?仕方ないじゃないか、こんなに可愛いのだもの!
お菓子禁止まではできない!!
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