第47話 ずるい

「みゃう、みゃー」


ルイは差し出し出した私の指をにぎにぎと繰り返し握りながら、何か喋っているけど私には言葉がわからない。




「もういんじゃね?ルイもアザミ様にべったりだし」


「ですね。こちらが捕まえたなら問題がありますが、ルイが自らアザミ様についているのですから」




そっか。そういうものなのか…じゃあルイはうちの子ってことでいいよね!




「よかったね、ルイ」


微笑みかけると私の手にすりすりとすり寄ってくる。


ああもう、本当にこの子可愛い。


つい頬が緩んでしまう。




「……俺もコドモドラゴンになりてぇ……痛っ」


レオンがそうぼやいた瞬間、シオンにスパンと頭を叩かれたのは見なかったことにする。


シオンは実の兄にも容赦がない。




「ところで、アザミ様」


「はい」


頭を擦るレオンを一瞥してシオンが私に目を向ける。


「…クラルテ国の弟王子に呼び捨てされていましたよね?」


「え…あ、はい。向こうは王子様ですから」


「……貴女も愛称で呼んでいましたよね?」


「…………そう呼んで欲しいと、言われた…ので」






お、おお、怒ってらっしゃるのですか!?なにゆえ!?




意図の読めない質問に私の語尾が小さくなっていく。


怒られるのだろうか、王族相手に失礼だ!とか。




でも、アレクが呼んでいいっていったし…




戸惑っているとシオンは椅子から立ち上がり、私の前に立つとじっと見下ろしてくる。






威圧感!威圧感半端ないです!






「……………アザミ」


「は、はい」


「今日は早く休んでください。明日からまた族長として働いて頂きますので。不可侵条約の事は既に一族中に通達してありますからご心配なく」


「あ、ありがとうございます…」


それだけ告げるとシオンは部屋から出ていってしまった。


シオンの行動に首をかしげ言葉を思い返し、気がつく。




な、名前…呼び捨てにされた!?






名前で呼んでくれると言うことは、友達くらいには思ってもらえてるということで良いのだろうか…


そう思っているとレオンも立ち上がり、私の隣へと腰掛ける。




「俺もアザミって呼んでいいか?勿論、公の場では控えるけど」


「…え、はい!もちろんです!」


「ありがとな。アザミもレオンって呼んでくれ、あとシオンの事も呼び捨てにしていい」


「良いのですか?」


「兄の権限で許可する」


レオンは悪戯っぽく笑うとぽふぽふと私の頭を撫でる。


「俺もシオンも、アザミの事大事に思ってんだよ。だからさ…何かあったら頼ってくれ、俺たちが全力で守るから。じゃ、おやすみ」


レオンはそういって立ち上がると、優しく微笑み手をひらりとふって部屋を出ていった。




「みゃう?」


レオンを見送った後、ルイがパタパタ飛びながら私の頬をつつく。


そこではじめて頬が熱を持っているのに気がついた。




…………ちょっとだけきゅんとした。


イケメンは、本当にずるい。


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