第43話 不可侵条約締結
呆気にとられる私達を他所に、アルフレッド王は手で涙を拭う。
「すまない」
「あの、父上…一体どうされたので?」
恐る恐る声をかけるクラウドにアルフレッドは目尻にシワを寄せて微笑む。
「王妃がいなくなり、私は王としての責務を果たすのに精一杯で、お前たちに気を回すことが出来なかった。にも拘らず、この国の事だけでなく魔導一族の事まで思いやれる王子に育ってくれた事に感動してしまってな…」
あー………
つまり、息子の成長に感極まって泣いてしまったと。
いいお父さんか!
そこにいるのはクラルテ国の王ではなく、一人の父親だった。
「私が王位を退いてもお前達ならば安心してこの国を任せられる。兄弟関係があまりよくないように思えていたが…これ程に協力しあえるとは。アザミ殿のお陰だろうか?」
えー…別に私なにもしてないよー…?
そう語るアルフレッド王の姿に戸惑ってクラウドもアレクも顔を見合わせている。
ルイも驚いているのか目をぱちくりさせながらアルフレッド王を見上げている。
「では、えっと…父上…魔導一族の件は?」
アレクの言葉にアルフレッド王は顔をあげると一つ頷く。
「アザミ殿の希望通り、魔導一族と不可侵条約を締結させていただく。息子達が協力できたのはアザミ殿のおかげのようだからな」
違うんだけど……あー、条約締結してくれるならそれでいいです。
にしても、いいのかそれで…。
「あ、ありがとうございます」
私としては要望を聞き入れて貰えたので文句はない。
この国大丈夫かなっていう心配はあるけど…、クラウドとアレクが確りしてるから大丈夫だよね。多分。
「良かったですねアザミ」
アレクが私の手を取り、にっこりと微笑む。
「アレクセレイ、簡単に女性に触れるべきではない」
私の手に触れていたアレクの手を、クラウドがつかんで剥がそうとする。
「アザミと僕の仲だからいいんですよ、兄上」
確かに女友達同士だとくっついたりハグしたりとか普通にするよね。
男友達同士でもやるだろうし…異性の場合はするのかな?
異性の友達いたことないからわからないけど……
あ、そういう話じゃなくてあれか!
クラウド様、アレクが他の人に触れるのが嫌なのか!
ブラコン!ブラコンなの!?やだ萌える!
危ない妄想をしかけた私を引き戻すように、ルイが腕の中に飛び込んでくる。
抱き止めてやり頭を撫でてると、それに気がついたアルフレッド王が目を細めた。
「アザミ殿はコドモドラゴンにも好かれているようだな、何か引かれるものがあるのかもしれん」
「そうでしょうか?」
「どうだろう、もし良ければクラウドかアレクセレイの妃とならぬか?」
「………………え」
いきなりの言葉にクラウドとアレクはピタリと言い合いを止めこっちを見る。
「是非心に留めておいていただきたい。さて、不可侵条約については用紙を用意させるので後程署名することとしよう」
こうして、アルフレッド王のとんでもない発言の余韻を残し、謁見は無事に終了した。
………無事、に?
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