第42話 同等の立場を求む
「……ほう」
アルフレッド王が目を細めた。その表情はいまいち読み取れない。
「悪い提案ではないと思うのだが、何故だ?」
アルフレッド王の提案は、クラルテ国の庇護の元安全な生活を受けられるというものだ。
そのままの意味として受けとれば確かに悪い意味には聞こえない。
けれど、クラルテ国に庇護を受けると言うことは魔導一族がクラルテ国よりも地位が下ということになる。
少なくとも、庇護を受けると言うことは対等の立場では無いだろう。
つまり、庇護を受けてしまうとクラルテ国の方が立場が上だと言うことを受け入れることになる。
そうなれば、万が一昔のように奴隷として扱われたとしても「庇護と安全な生活」を満たしていれば拒否することはできなくなってしまうかもしれない。
アルフレッド王はそれを見越しての提案なのだろうか、だとしたら魔導一族を利用しようとしていることになる。
そんなこと、私が絶対にさせない。
「畏れながら申し上げます、国王陛下。族長として私が望むのは魔導一族との聖域と同等の不可侵条約の締結ですわ」
「聖域と同等の…?」
眉を潜めるアルフレッド王に私は言葉を続ける。
「はい。魔導一族はクラルテ国にも、東の国にも属さない一族です。ですから、魔導一族を独立した国のようなものと考えていただき、その上で不可侵条約を締結していただきたいのです」
私のいっていることが無礼なのは百も承知だ。
けれどここで引くわけにはいかない。
じっと視線をそらさずに、まっすぐアルフレッド王の目を見る。
アルフレッド王がなにか言いたげな顔をして口を開いた時だった。
「父上」
クラウドの声が割って入る。
「魔導一族はクラルテ国で庇護するべきではないと思います」
「……何?」
アルフレッド王は眉間にシワを寄せるとクラウドを見る。
それに怯んだのかクラウドは一瞬、言葉を飲み込みかけたが続ける。
「……っ、父上の提案は一方的なものです。魔導一族を尊重していない。昔、害を与えた先祖達と代わらぬのではありませんか?私達はそこから変わらねばならない、同じ過ちを犯してはいけないのです」
「兄上の仰る通りです。父上、僕も魔導一族は他国と同様に尊重するべきだと思うのです。それがこの国のさらなる発展にも繋がるかと」
クラウドの言葉をアレクが援護する。
戯れ事だ、と一蹴されるだろうか。それとも激怒するだろうか。
恐る恐るアルフレッド王の顔色を伺うと片手で顔を覆っていた。
「こ、国王陛下……?」
声をかけるが反応がない。
クラウドとアレクも不振に思ったのアルフレッド王を見つめている。
「………っ、二人とも大きくなって…」
暫くして聞こえて来たアルフレッド王の声は震えていた。
その姿にやっと状況が把握できた。
この王様、号泣してやがる。
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