挿話 レオン-城外にて-
一人城の外で待機してる双子の弟の元に戻ると怪訝な顔をされた。
「…アザミ様は?」
その問いに先程まで彼女と庭園でやり取りした内容を話す。
「僕も行きます!」
途中まで話したところで遮るようにシオンが叫ぶ。
弟よ、一人称が昔に戻っているぞ。
昔からの口調も一人称も変えて俺よりも、兄貴よりもしっかりしている弟は感情がひどく乱れると一人称が昔のように『僕』に戻る。
そこを突っ込むとこれでもかというほど不機嫌になるので、緩みそうになる口許を押さえ堪える。
俺の弟は素直で分かりやすい。
「そういうと思ってアザミ様には一緒に行くって言ってある。明日の朝になったら、また城の中に忍び込んでついていく。シオンの魔法だと途中で効力が切れる可能があるから、俺がお前に魔法をかける形でな」
自分に使えば丸一日姿を消せるが、自分以外に使うとなると効力は下がる。
それでも六時間はもつはずだ、王の謁見にそんなにかからないだろうから問題ないはずだ。
「わかりました……全くあの人は私達を振り回しすぎです」
納得したシオンは深いため息とともに呟く。
振り回されてもついていく癖に何をいってんだか。
……まぁそれは、俺もだな。
昔面倒を見ていた少女が、一族の未来を背負って王と対峙する。
世話をしていたことを彼女は覚えていないようが、何年も前、小さい頃だから仕方ないだろう。
平気そうな顔をしていたが不安があったのだと思う。
抱き締めた時、少しだけ震えてた
不安じゃないわけねぇよな…
助けを、求めればいいのに。と思う。
東の国で絡まれた時も、クラルテ国に連れていかれた時も、今回王と謁見が決まったと聞かされたときも。
一度も『助けて』って言われなかったんだよなぁ
一人で背負いすぎなんだよ。
……いや、背負わせてるのは俺達か
震えるほど、怖いくせに戦おうとする。前に進もうとする。
「シオン、明日は何が何でもアザミ様を守るぞ」
そう告げると弟はこくりと頷く。
「当たり前ですよ…あの人を失うわけにはいかない」
そう語るシオンは真剣な瞳だった。
双子だから、好みまで同じなんてな。
嬉しいような、困るような…
複雑な思いを胸に感じながら、俺は野宿の準備を始めるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます